フルタイムで勤務しながら育児にも全力の“女医ひとみ先生” そのパワーの原動力とは?
2019.09.02 08:00
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仕事と子育ての両立は働くママさんが抱える共通の課題です。今回は、大学病院に勤務医としてフルタイムで働きながら、育児との両立に関する情報をTwitterなどSNSで精力的に発信する昭和大学病院の伊田瞳先生を紹介します。なんとTwitterアカウントのフォロワーが1万人以上と人気の女医さんで、医療職だけでなく一般のママさんからも広く支持を集めています。
医師をはじめとした医療職では、女性は出産を機にキャリアアップや継続を諦めてしまうケースが少なくありません。そんな医療の現場で、キャリアを継続しながら育児もこなし、そのノウハウをSNSで発信したり、論文も執筆されている伊田先生。そのパワフルさには、ただただ感心するばかりです。彼女のライフスタイルには、育児世代の医療職に従事する女性が参考にすべき点が多く、関心も高いのではないでしょうか。
呼吸器内科医・医学博士
昭和大学病院 呼吸器アレルギー内科/睡眠医療センター勤務2012年、昭和大学医学部卒業、2014年 昭和大学呼吸器アレルギー内科 入局。
2017年 結婚・出産、 2018年産後3か月でフルタイム、当直ありで臨床に復帰。現在は中々行けなくなってしまったと語る趣味は、「生バンドカラオケ」
特に育児と仕事の両立を意識せず
「子どもが欲しい!」から出産を決意
――育児とフルタイム勤務の両立を実現している伊田先生は昭和大学病院の呼吸器内科にお勤めですが、そもそも呼吸器内科に進んだきっかけについて教えていただけますか。
伊田先生 研修医として呼吸器内科をローテートした際、感染症や腫瘍、アレルギー疾患など、幅広い分野に対応できるところに魅力を感じたのです。呼吸器内科領域の疾患には治癒が望めないケースも多く、しばしば医師として無力感に苛まされることもあります。ただ、研修医時代の担当指導医の、患者さんの悲惨な経過にも最後まで正面から向き合う姿を目の当たりにして、これこそ自分の理想だと思い、入局を決めました。
――心身ともにハードな呼吸器内科ですが、フルタイムで働きながら結婚、出産を経験された伊田先生は、出産前に医師としてのキャリアを継続することについて、どういったお考えだったのでしょうか。
伊田先生 実は、あまり先のことは考えていなかったんです。「子どもが欲しい!」という気持ちで出産に臨みました。良くも悪くも、私の周囲に出産した人がいなかったため、特に不安を感じることもありませんでした。
――伊田先生は2017年に結婚・出産され、2018年には産後3か月で当直ありのフルタイム勤務に復帰されました。現在の生活スケジュールは、どのような感じなのでしょうか。
ひとみ先生の1日のタイムスケジュール
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AM5:30
起床・朝食準備
息子が朝食を要求してくるため活動開始。息子と別室担当の日はこのタイミングで起床。
夫と一緒に、食洗機のお皿、乾燥洗濯機の洗濯物の片付け、寝室の片付け、息子の朝食づくりを二手に分かれて行う -
AM6:30
残りの家事、息子の世話
(旦那さん出勤)
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AM7:30
出勤
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遠隔家事
遠隔操作でロボット掃除機回し、ホットクックの予約調理する場合もあり
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PM17:00
退勤
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PM17:30
保育園お迎え・夕食準備
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PM18:30
息子の夕食介助
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~PM19:30
夫帰宅・息子の入浴介助
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PM20:00
息子の寝かしつけ
しんどければこの時に寝落ちすることも
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夕食・家事
夕食、夕食片付け、皿洗い、洗濯
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PM21:00
仕事
研究、論文執筆、資料作りなど
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PM22:00~0:00
就寝
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伊田先生 身体がしんどいときは、トリアージしたタスクの中でも睡眠時間の確保を最優先にしています。息子との添い寝・別室寝を隔日で夫と交代制にして、お互い当直の前後は別室寝にしたりして、良質な睡眠を確保するように努めています。
女性だけでなく男性医師も
一歩踏み出す勇気を持って!
――かなりハードなスケジュールをこなしている伊田先生ですが、育児と仕事の両立を実現するために大変なことはありますか。また、どんなことが伊田先生の心の支えになっているのでしょうか。
伊田先生 正直、家庭生活は余力があまりない状態で、家族の誰かが体調を崩してしまうと一気に崩れてしまう怖さがあります。たとえば、私が体調を崩すと夫が家事・育児のすべてを負担しなければなりません。逆もまた然り。そうなると、お互いに消耗してしまうのが目に見えています。
仕事に関しても、これまではがむしゃらに限界まで頑張ればよかったのですが、今は“残業ができない立場”として、常にどこまで自分でできるか、どこから他の人にお願いしなければならないかを考える必要が出てきました。これについては、最初は慣れなくて、ついつい自分ひとりで抱え込んでしまい、結果的にかえって周囲に迷惑をかけてしまったということもありました。
育児と仕事の両立を支えているのは、やはり家族ですね。夫が私にとって、なくてはならない存在というのは言うまでもありません。また、1歳の息子の成長も私の心を支えてくれています。たとえば最近では、私と一緒にゴミ捨てを手伝ってくれたり、ドアの鍵を閉めている間に、エレベーターのボタンを押してくれるなど、少しずつですが戦力になってくれています。そういうことが、育児と仕事の両立という生活のいちばんの励みになっていると思います。
――やっぱり家族の存在が伊田先生のモチベーションになっているのですね。ただ、一般の仕事と異なり、医療職というのは女性にとって、育児と両立するのが難しい職種だと思います。医療職の女性が育児を仕事の両立を実現するためには、医療業界に何が必要だとお考えでしょうか。
伊田先生 そうですね……。ちょっと意地悪な答えになってしまうかもしれませんが、その質問が女性だけに向けられることのない体制になることが必要なことではないかと思います。女性が働く権利、男性が育てる権利というのは等価に扱われるべきであり、片方の権利だけに視点を置いていては、なかなか医療の現場は変わっていかないでしょう。特に男性医師が育児をする権利については、恐ろしいほど侵害されているのが現状です。ドクターのパパだって「子どもを育てたい」と思う人は多いのですが、現在では「女性の働く権利さえ守ればいい」という偏った考えのもと、ますます彼らの権利が侵害されているのです。
具体的には、勤務を完全シフト制にしたり、病棟管理がチーム制で運営したり、時間外の病状説明を病院全体のルールとして中止することなど、医師の働き方改革を進めていく必要があるでしょう。ただ、現状では制度としてさまざまな課題があるのも事実だと思います。
そして、あえて男性医師にお願いしたいのは、ぜひ「初めの一歩を踏み出してほしい」ということなのです。たとえば週に1度、難しければ月に1度でもいいので、育児のために決まった時間に仕事を終わらせる日、オンコールを断る日を作っていただきたいと思います。こういう小さな一歩から、医療の現場全体が変わっていくきっかけになるのではないでしょうか。
婚活中の医療職女性へアドバイス
相手探しは理想追求よりも「NG条件」を決めよ!
――なるほど。どちらかが、すべてを負担するという世の中は、やはり少し変えていかなければならないということですね。ここで少し話を変えますが、医療職に限らず、結婚前の若い世代はついつい仕事ばかりで、異性との出会いといったプライベートを疎かにしがちですよね。伊田先生は2度目の結婚ということで、“幸せな結婚”を実現するために独身の婚活世代の同業者へアドバイスをいただけますか。
伊田先生 結婚生活については、私もまだまだ新米なので、婚活についてアドバイスさせていただきますね。これは女医に限った話ではないのですが、相手を探す際に希望条件を決めるのではなく、NG条件から決めていくことをおすすめします。「これだけは、どうしてもダメ!」という性格や生活習慣などをピックアップしていく作業ですね。そして、それらのNG条件を満たさない相手は全員候補に入れること。そのほうが、n数が増えるのでチャンスが増えます!
――確かに理想ばかりを追い求めると、機会損失することも増えますね。それでは最後に、超多忙な生活を送られている伊田先生ですが、育児と仕事以外に自分の時間を作る方法や、リフレッシュ法などがありましたら教えてください。
伊田先生 これは人それぞれ嗜好がありますので、ご自分の好きなことを楽しみたいという気持ちが、自分の時間を作るためのモチベーションになると思います。私の場合、とにかく研究が好きなので、夜、家事をすべて終わらせてから研究のことをやっている時間がいちばん楽しいです。また、今回インタビューしていただくきっかけにもなったTwitterなどSNSで、仲のいいアカウントさんと交流するのも、とてもいい息抜きになっています。
――やはり育児と仕事の両立という生活には、適度な息抜きが必要なんですね。今回は、貴重なお話を本当にありがとうございました。
(インタビュー・Dspace 運営/ 編集 水澤敬)
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