
オンラインでも海外大学院の履修ができる?!日本で臨床とイギリスPhDの両立ー医師インタビュー
2022.03.07 09:00
本サイトはプロモーションが含まれています。
画像はイメージです。(Canva)
医療の専門家である皆様の中には、更なるキャリアアップを目指して海外の大学院への留学を検討した方もいらっしゃると思います。しかしながら国内での仕事との兼ね合いや、費用面など、なかなか決断に踏み切るのが難しく断念する方も少なくないでしょう。
実は、日本国内からでも海外の大学院の履修が出来ることをご存じでしたか?
今回は、以前イギリス留学の経験のインタビューをさせていただいたEco先生に、修士留学の後、現在オンラインでイギリスの大学のPhDのコースに入った経緯や、オンラインでの海外大学の履修について教えていただきました。
前回のインタビュー
https://dspace.co.jp/column/35981/
Eco
関西の私立医科大卒業後、イギリスの大学院へ進学・修了。現在は日本に在住し、医師をしながら、イギリスのエジンバラ大学のSPHをオンラインで履修中。
大学卒業後都内の病院で2年間研修医として勤務。研修終了後、約一年大学病院にて専門性高い後期研修を行う。しかし、もともとしたかった公衆衛生の分野に進むことを考えた結果幅広い臨床経験を積みたいと思い総合内科に転科。都内市中病院、へき地の病院などで後期研修を終了。
今後の人生について模索中(笑)。追われないとできない性格をどうにかできないものか・・・。
本当は日本で考えていたPhD
画像はイメージです。(Canvaより)
ー前回はイギリス留学中にインタビューさせていただいてどうもありがとうございました!
早速ですが、なぜPhDに行こうと思ったのですか?
現在は、体調面のこともあり、つきたい仕事につけるほど元気じゃないんです。
今の非常勤での仕事のスタイルは体調に合わせられるからそうしています。夜間に、対応が必要な入院の人がいないことや、お風呂のすぐ横にケータイを置かなくてよくなったことで、気が休まりました。
ですが、専門医をとっていないことは後ろめたく、社会的にもPhDが欲しかったのと、体調が良くなった場合に、国際機関やシンクタンク、製薬会社等で勤めようとした場合にもPhDが有利に働くからです。
国際機関に勤めている人には院生も多く、働きながらPhDをとる人もいます。過去に製薬会社の面接を受けていたこともありましたが、院生をしながらでもいいと言われたほどです。
ー現在のベストを考えた上での、キャリアの道なのですね。
イギリス留学後に日本に戻ってきて、今回再びの進学とのことですが、内容についてもぜひ詳細をお教えください。
前回のインタビューの際には、イギリスで医療政策とか医療経済を専門として履修し、修士を取得しました。
現在は、そのまま今回の研究も、修士の研究と関連して、薬剤政策など、同じ研究をPhDで、している。修士のときと、大学院とで学校は違い、現在はエジンバラ大学です。
体調の問題で、日本を離れるのは不安でした。他にも大学時代の奨学金の返済など資金面のこともあったのでどうやったら研究が出来るか、と考えて、最初は日本の大学院に問い合わせたのですが、私にとってはとても閉鎖的だったんです。学問が細分化されすぎていました。
そういう経緯で、イギリスの方が良いのではと思って探し始めました。
Phdは研究が主になります。ディスタンスラーニングもあるところもありますがすごく少ないです。でも問い合わせてみると意外とあって、それで探してみました。
実は、修士の場合だとほとんどの大学にディスタンスラーニングのコースがあり、向こうにいけなくても、学ぶことが出来るんです。アメリカもそういう大学が多いです。
画像はイメージです。(Canvaより)
ー最初は日本で探していて、海外に行き着いたのですね。オンラインの履修(ディスタンスラーニング)でも、何回かは現地まで履修に行く必要があるのですか?
2週間だけあります。先生や同じPhDの学部の人たちと交流やディスカッションするためです。
現在は日本にいながら、月に1回スーパーバイザーと一時間程度話し合いをしています。
だから外国の大学院を諦めたくない人は諦める必要がないんです。
イギリスだけでなく、アメリカでもそういうのありますし。
日本はまだ通信で出来る大学はほとんどないですよね。もうちょっとこう、日本も幅広くしたら外国の人が日本の大学に興味持ったりとかもあるだろうなと思います。
ー日本の大学院にも聞いてみて、難しそうだったということですが、そのことについて詳細を教えていただけますか?
私が研究したかったテーマは、”薬剤政策” という分野に関してで、研究への製薬企業の携わり方などです。
最近でいうと、例えばコロナなどで Health Security (健康安全)に関係することが起きた時に、どういう風に製薬会社に国が関与していけばいいのかということで、その領域は、国家安全保障にも関わってきてしまうんです。
このような国家安全保障と関わる分野は、日本では医療分野ではなく、国際関係学部だったりだとか、政治学部などになります。
医療政策を軸に国立大学、私立大学など多数問い合わせました。夜間や社会人向けコースがある大学もあります。
ですが、大半は、医療政策の修士を持っていても、国際関係学部、政治学部という訳ではないからということで、門前払いに近い状態でした。
日本、イギリス、アメリカ、スイス、各所に連絡してみたが、対応は全然違います。
「面白いテーマだとは思うけど、うちは Distance learningはPhd で受け入れてないんだ」と返ってくるところはしょうがないのですが、それ以外は、コンタクトをとると、まず「研究計画書みせてください」、「一度面談しましょう」などと返してくれます。
海外の場合は、例えば医療政策の学部だとしても、国際関係をやってきた先生、政治をやってきた先生、公衆衛生や疫学をやってきた医師など、多岐にわたる先生がいて、そもそもの受け皿が広いです。分野が2つに渡ったとしても受け入れてくれるイメージです。
実際私のスーパーバイザーの経歴は特殊でジャーナリストとして勤務していた時期もある方です。医療の学問に関してのバックグラウンドがある方ではありません。
ーそうだったのですね。日本の大学の対応は少し残念ですね。
そうなんです。不思議なことに、日本で先生をしているのは、海外でPhDとっている方が多いんですけどね…。
個人的な感想ですが、最近で言うとノーベル賞を受賞した方が、アメリカで研究していたと思うんですが、日本って、なにか頑張ろうってした時に、場がすごく見つけにくいというか、すごくいい人に出会えばいいけど、なかなか出会いにくいですよね。
学問が違うものが二つあったとしても共通点は絶対にあると思うのですが、それが分かれすぎて、都合上分けているから、そういう弊害が出てきてるのかなと感じたりしました。
医療でも、うちの科ではないみたいな感じで、科が分かれていて、患者さんが路頭に迷うみたいなあれと同じような、なんだか少し違和感を感じる部分と似ている感じがしました。
海外留学先へのコンタクトと準備について
画像はイメージです。(Canvaより)
ー色々と大変な中、海外でのPhDに行き着いたのですね。
先生は、海外にもコンタクトを多数とっていらしたとのことですが、具体的にはどのように交渉されたのですか?関心がある方も多いと思うのでぜひ教えてください。
海外の先生には、ホームページに記載の連絡先から連絡しました。自分から行かないと何も始まらないので。
もちろん、突然連絡してすみません、と添えます。
あとは「履歴書」「研究計画書」を貼り付けて送りました。返事がなくても、もしかしたら埋もれてるかなと、二通は送ります(笑)。
ー海外の教授にコンタクトをとるのは、基本的にメールですか?SNSなども利用するべきですか?
メールや、LinkedIn申請をします。
LInkedInは海外では、みんな基本的に仕事関係で使っているのでいやなイメージはもたれないかなと思います。
イギリスの修士の授業でも LinkedInのセミナーがあったくらいです。
ーLinkedInがおすすめなのですね。オンラインで履修することに関しては、特別に交渉など必要なのですか?
オンラインでの履修に関しては、最初から「 PhDのディスタンスラーニング」があるのでそのことは特別に配慮してもらったわけではないのですが、病気があるから、延期することがあるかもというのは考慮してもらえました。
ーオンライン履修のコースがあるアメリカの大学院も検討したのですか?
修士で留学していて、イギリスに慣れていたのでイギリスにしました。アメリカはまた別の試験が必要だったり、システムになれるのも大変だと思って。
画像はイメージです。(Canvaより)
ー入学するまでの試験はどのようなものがあるのですか?
まず「英語の試験」です。
イギリスの修士を出ていたので、英語の試験が免除になりましたが、日本の修士を出ている人は必要です。
あとは、「履歴書」、「研究計画書」
「パーソナルステートメント」(どうして研究したいのか)
そして、「推薦書」2通が必要です。
ー「推薦書」はどのように工面しましたか?
医学部の時の公衆衛生学の教授と、イギリス留学時の修士の時の教授にお願いしました。
A4 1枚分の下書きで案を作成して送ります。
イギリスの修士の時は、どちらも職場の上司と、大学の教授にお願いして大丈夫だったので、海外の先生である必要がある訳ではありません。でも1人はアカデミックな所属の人でなくてはなりません。
ーなるほど、ある程度コネクションがないと大変そうですね。
英語の試験に関しても詳細をお教えください。
英語試験は、イギリスもアメリカも「IELTS」と「TOEFL」が必要です。
上位大学ほど求められるスコアが高くなってきます。
画像はイメージです。(Canvaより)
ーやはり英語は重要なのですね。修士の時は、母国語が英語じゃない学生もいましたか?
韓国、中国、タヒチ、南米、など沢山いました。あとは北米、カナダです。
医師業と学業の両立
画像はイメージです。(Canvaより)
ーそれでは、実際にオンライン履修を経験してみての現在の所感を教えてください。
友達はできないけど、私は、オンラインでいいかなという感じがしています。一度修士で留学して友達もできて、外国で暮らす経験もして、英語にも慣れたし、勉強も資料をみるのも日本でできるので。それにディスタンスラーニングのコースでも、1ヶ月に1回は、教授との交流もあります。
ー同級生とはディスカッションする機会はオンラインであるのですか?
今は、授業を受ける学年なのであるけれども、実際、イギリスは現地の授業で、クラスメートとディスカッションする機会は、アメリカほど成績に考慮されるわけではありません。
友達は出来にくいかなとは思います。それもあって、1年に1回現地に集まります。
ー現地に集まる時は、自分で宿泊など手配するのですか?
そうです。
ーちなみに同級生はどんな属性の方が多いのですか?
パートタイムの学生は、日本でいう厚労省、製薬会社、NGO団体、などの人がいます。
色んな人はいるけど、医者じゃなくても医療には何かしら関わっているようなバックグラウンドの人が多いです。
ーEco先生は臨床もされていますが、実際どのように両立していますか?
現在は、週に3日は半日勤務、週2日は終日勤務、週2日休みです。
ー週休2日だけで、プラスPhdもされているんですね!とても忙しいと思うのですが、授業の日程と合わない場合はどうしているのですか?
授業は基本はライブですが、後から見られる様になっています。
ディスタンスラーニングにも、パートタイムとフルタイムのコースがあります。
私は、仕事と体調のため、パートタイムをとっています。
フルタイムだと通常3年~4年かかり、パートタイムだと通常6年かかります。
ですが、海外の学生で、週5で働きながら、4年半で修了した人もいるそうです。
あとはディスタンスでも、研究発表と質疑応答など学位審査は現地で受ける必要があります。
ちなみに、ディスタンスのコースの場合は、奨学金制度は少ないです。
平等に教育を受ける権利
画像はイメージです。(Canvaより)
ー本日はたくさん教えていただいてどうもありがとうございました。インタビューの最後に一言お願いします。
外国の大学で学んでみたい人もいると思うのですが、向こうに行かなくても、日本でもそれができることもあります。
いけないから無理だなと思う人も多いと思います。
イギリスで修士を履修した時も、寝坊したとしても、全部後で授業が履修できるようになっていました。
中には「体調がしんどいから帰る〜」という友達もいましたが、そうなっても後で履修できるようになっているんです。
何回も見返したり、速度を落としてみたりできます。
ーあとで見返せるのは、外国語の学生にとってはありがたいですね。
経験を踏まえて、日本にもっと取り入れて欲しいことがありますか?
それぞれ大人だから色々な事情があると思います。
発達障害、目が見えないなどのハンディキャップ。
海外では、平等に教育を受ける権利があるから、そういうので落とされることはありません。
日本の大学院に問い合わせる時は、自分の体調のことをいうと、治してからすれば?と言われることが結構ありました。
イギリスでいうと、病気のことを言っても、それで不合格になることはないということをまず言ってくれ、締め切りの延期などの配慮などもしてくれます。聴覚過敏の友人は狭い別室受験で耳栓をしてテストを受けさせてもらえていました。
外国だと、もっとカウンセラーもいます。
私自身、Distance learning ですが、Disability serviceのスタッフと現状の体調に関して、大学側が何か研究を行う上で不便なことなどないか?などに関して面談を設けてくださいました。
病院とかもまだそういうところがあると思います。私も一回女性だからって言われて断られたことありますし、結婚とかってまだですかって言われてたこともあります。
ーええ!それは今の時代にびっくりしますね。
私はそれを言われた時には、あんな質問されてすごく不愉快でしたということは伝えましたけど、何かでもまだやっぱちょっと遅れてるなと思います。
障害ある人に対しても、まだやっぱり冷たいんじゃないかなと思います。
日本もいろんな人が教育を受ける機会があればいいのになと思いますね。
ーEco先生、今回は沢山教えてくださって、インタビューへのご協力をいただき誠にありがとうございました。海外留学を考えている方、仕事との両立で諦めている方も大変参考になったのではと思います。PhDとお仕事と両立を頑張ってください!
人気記事
M.D.とPh.D.とは?医学博士の取り方、日本と海外の違いとメリット。...
MD-PhDコースがある日本の大学医学部まとめ!医学部在籍しながら医学博士が取得できるMd...
大きすぎる国家資格免許証の保管方法。医師免許証・医療系免許証の取扱説明書...
【最新2024年度版(2025年実施)】すぐわかる!歯科医師国家試験合格発表後の免許証受け...
【例文あり】医療従事者のための「妊娠報告」後編・ビジネスマナー講師に教わる妊娠報告メールの...
【2025年最新版】登録済証明書のオンライン発行の方法−医師等免許登録確認システム−...
【最新2024年度版(2025年実施)】すぐわかる!医師国家試験合格発表後の免許証受け取り...
【最新2023年度版(2024年実施)】すぐわかる!医師国家試験合格発表後の免許証受け取り...
カードタイプの医師免許証?日本医師会の医師資格証とは。費用・申込方法。...