【インタビュー】NPO法人ソルウェイズ代表 宮本佳江さん【後編】ベッドの上で天井を見て過ごすだけではない人生を

2019.08.31 03:00

NPO法人ソルウェイズ代表 宮本佳江さん

元薬剤師。ご自身が2児の医療的ケア児の母親でもありながら、医療的ケア児のための施設を運営している。

インタビューを前編・後編に分けてお届けします。

【前編】はこちら

 

生活介護ではなく、子供たちにも青春を。

Q.施設の目標はどのような未来ですか?

 

今度、新設する施設で、成人までの施設ができて、「生まれてからなくなるまで、生まれ育った地域でどんなに重い障害があっても生きていく」というところでは、私の中では、一つ目処が立ったかなとは思います。

でも、それが最終目標ではなくて、高校卒業した後も子供たちに何らかの社会参加をしてもらいたいと考えています。

ただベッドの上で天井を見て過ごすだけの、成人になると介護になってしまう。それって違うんじゃないかなって。私たちが当たり前に20代青春みたいに過ごしてきたのもこの子たちにもあるんじゃないかって思っています。

 

あとは、仕事も考えていきたいです。生活できるほどはもらえないかもしれないけど、そこが生きる喜びだったり、私たちが人間が生きる理由ではないかなと考えています。

 

親亡き後の医療的ケア児の居場所

また、親亡き後の場所も考えたいと思っています。

そのためには今の医療職だけでは足りない。一人暮らしさせる感覚でグループホーム・ショートステイのような、大規模ではなく小規模なものも必要だと思っている。

そういう施設を実現するにはお医者さんや看護師さんは必要だと思っているので、今からもう探してはいるんです。

 

そのような施設はだいたい郊外にあるのですが、私は、今のこの施設のようにどこからでも来れるようなところに作りたいと考えています。

 

農福連携にも取り組みたい。

子供たちが自然などに関われる機会がもっと産み出せるのではないかと考えている。

成人した子供たちが関わって、何か作ることにも関わり仕事ができないかな。農業は後継者問題もあるので、何かできないかなと考えています。

札幌は観光産業が盛んですが、近くに行くと畑もあって、加工品を観光の場所で販売したりすることもできそうです。他の地域のところにも見にいって、何か実現できないかなと構想を持っています。

札幌市の近郊で気軽に誰でもバリアフリーで子供を連れて行けるような観光・農業・宿泊ができるような施設など構想しています。

 

社会のサポートと現場からみたジレンマ

 

Q.社会のサポートはいかがですか?宮本さんが施設を設立したときより良くなっていますか?これからどのようになっていくと、家族や重症児のお子さんにとっていい社会になると思いますか?

 

昨年度から、看護師に対する医療的ケアに対する報酬がつき始めました。しかし、蓋をあけてみると、逆にそれを算定するためには、定員いっぱいで利用しなければならない現状になっています。それが、実際いいのかどうかという課題に直面しました。

報酬を算定するほど人件費が高騰し運営がままならない。看護師の人数が必要になり、スタッフが集まらない。これでは、医療的ケアはあるが障がいの程度が重たい子は受け入れないのか、重症心身障害状態ではなく難病児はどうなるのか、ジレンマに直面しました。

 

医療的ケア児が成人まで生きることを想定した制度が必要

国には、もう少し報酬の付け方を考えていただきたいと感じます。さらに、今は児童に対してしか報酬制度が整っていず、成人された方への制度が整っていない現状です。

 

おそらく昔の時代は生きられなかったから、想定できていなかったんだと思います。でも今は医療が進歩して、もっと寿命が長くなり、成長している。昔は重症の子供たちが生まれて成長することが想定されてきていなかったと思います。

医療的ケア児の問題も最近出てきた問題ですが、さらに成人になってからは想定していないのでしょう、全く制度が間に合っていない現状です。

 

通学先がない医療的ケア児の存在。

今、問題になっているのは、筋ジストロフィーなどの知能に問題のない方が、社会で仕事をしていくにはどうするのかという問題です。

 

今後は、知的にも問題がある病気の方も成人していく時代になります。

今一番困っているのは、内臓疾患があって歩けるが、医療的ケアが必要であり、知的には重度という子が成長した時に、知的障がいの施設にいくのか、肢体不自由の施設にいくのか。行き場がない、そういう問題になってくると思います。

一方にいけば、知的障がいがあるから通所できません。知的障がいの施設だと走り回る子もいるし、医療的ケアもあるから通所できませんとなってしまうと思う。

 

そのあたりが現状は全く整理されていない。知的には問題なくて手話もできるのに、通う場所がなかったり行き場が無い現状もあります。

 

『医療的ケア』という名前がついてしまって特定行為ができたばかりに、ハードルが高いものになってしまっているためにこのような問題が生じていると感じます。

 

 

後記

今回はじめて、医療的ケア児の施設に実際にお伺いした。

想像していたものとは全く違った。

子供たちが活発で、音だけ聞いていれば、病気があるとは全く思えないくらい、とてもにぎやかで、生き生きとした空間だ。

宮本さんが言う、家で保護者と過ごすだけではなく、「外の世界、友達と接することの大切さ」を肌で感じた。

 

自らも医療的ケア児の子をもちながら、医療的ケア児の人生を考え、当事者とその家族に必要なサービスを模索する宮本さん。同じ母親から見ても、想像もつかないくらい忙しいだろう宮本さんだが、とても明るく、快活かつ、行動力、実行力がある。

 

実際、筆者は、クラウドファンディング が成功してから入浴施設の工事をするものと思っていたのだが、インタビュー時にはすでに施行中であり、宮本さんの行動力と入浴設備の取り組みへの強い決意を感じた。

 

医療的ケア児の社会的な課題は山積みだが、彼女のような存在は、そういった課題解決の一歩になるだろうと感じる。

当事者の活動をもっと世の中に知ってもらい、社会の支援の拡充を願いたい。

 

 

医療職の私たちができること

宮本さんの施設にお伺いし、スタッフのほとんど全員が有資格者であることに驚いた。

医療職の感覚だと、医療機関は、有資格者とは別に受付や補助スタッフなど非医療職も比率として多いイメージがあると思う。

それだけ多くの専門職のサポートが必要だということは、今後、医療的ケア児のための施設がもっと全国に広がるには、運営するにあたっての人材の確保も重要な課題だと感じた。

 

医療的ケア児の施設は、ただ単に医療の資格を活かすだけではなく、医療的ケア児の子供達、その家族の人生に寄り添う職場である。

病院勤務と比較すると、夜勤などもないので、育児との両立がしやすい。

ぜひ興味のある方で、看護師免許や該当の資格がある方は、一度近くにそういった施設がないか是非調べてみていただきたい。

 

 

宮本さんが実施していた入浴設備のためのクラウドファンディング

 

あなたにおすすめ