なぜクラウドファンディング?医療福祉分野に広がる背景と成功例7選
2019.07.27 14:45
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クラウドファンディング とは?
近年は、クラウドファンディング(Crowdfunding)と言う言葉をよく目にすることが多いと思います。もしかしたら、お読みの方の中にも実施されたことがある方、支援された方がいらっしゃるかもしれません。
クラウドファンディング は、一般的には、インターネットを介して、他の人に資金提供や協力を行うことです。最近は、企業やこれから起業する人の融資・補助金とは別の資金調達の手段の一つとしてもよく利用されています。
クラウドファンディング には、物を提供するためのテストマーケティングと受注と予約販売のようなもの、お店や施設をオープンするためのもの、設備を補填するためのものなどさまざまな種類のクラウドファンディング があります。
近年では、医療機関や、福祉施設などが設備等のために実施する事例をよく目にするようになってきました。
医療機関がクラウドファンディング を実施する背景
なぜ医療機関がクラウドファンディング を実施しなければならないのか?
以下にも医療機関が実施していたクラウドファンディング をご紹介しますが、医療機関の安定した運営に資金や人材が足りていない現状があります。
民間の病院の場合もありますが、公的な医療機関が実施している事例も多く見受けられます。
公的な機関でありながらも、需要と供給が合わず、安定した医療の提供のための苦渋の決断の上で、資金調達としてクラウドファンディング を実施するという例が多いようです。
例えば、こちらの大阪府三島救命救急センターの例をご覧ください。
大阪府三島救命救急センター:命と向き合う現場を存続させたい。
【実行者】大阪府三島救命救急センター
【実施期間】〜2019年9月3日(現在実施中)
【達成金額】3548万9,000円以上(現在実施中)
【支援者数】1,683人(現在実施中)
“「大阪府三島救命救急センター」
ここは大阪府三島地域で唯一、そして全国でも数少ない“単独型”の救命救急の現場です。わずか41床の病院ながら、命の危機に直面した患者さんを救うべく、24時間・365日・30余年、この地域での救急医療の最後の砦としてその役割を全うしてきました。
しかし、救急医の人手不足、 診療報酬の改定、あるいは病院の財政問題など、複雑に絡み合う様々な問題が一分一秒を争う救命の現場で課題となっています。
どんな時代にあっても「人の命を救えるのは、人しかいない」という事実は揺らぐことはありません。救える命を“公”平に救うため、“公”的な資金補助を受けている私たちが、今回あえて選択した“クラウドファンディング”という手段とその決意。
三島地域、ひいては大阪府の医療を未来につなぎとめるために、ぜひ皆様の応援とご支援をお願いいたします。”
(ready forプロジェクトページより引用)
地域に必要な救命救急としての医療機関ですが、公的な資金を受けながらも、医師不足や院内感染の発生による患者受け入れ制限でによる診療収入の減少、それによるさらなる医療者不足による負の連鎖。あらゆる手を尽くした上で、クラウドファンディング 実施を決断したそうです。こちらは2019年7/27日現在、まだプロジェクト実施中ですが、すでに1683名、3548万円以上の支援額を達成しています。
本来であれば、社会的なサービスとして安定した医療を届けなければならないはずですが、病院や所属している医師がプロジェクトをしなければならない状況になっているというのは、かなり問題があるように思えます。
自治体の責任がある立場の方は、これをご覧になっているのでしょうか。
しかしながら、これらのプロジェクトが数多くの支援者数とともに目標金額を達成しているという事実から、地域の方々だけでなく、インターネットを通じて一般の方々にも必要だと思われて関心を寄せられていることだといえます。
そういった動きをみて、自治体や国が動いてくれると信じたいところです。
ここで、医療機関が実施してきたクラウドファンディング をご紹介していきます。
病院の設備関連のクラウドファンディング 事例
1. 小さな体に寄り添い守る。最前線で闘う小児医療の現場に光を
https://readyfor.jp/projects/nagoya_u_hospital
【実行者】名古屋大学医学部附属病院(病院長 石黒直樹)
【実施期間】2019年3月7日〜2019年5月31日
【達成金額】3658万2500円
【支援者数】900名
【概要】1871年に設立した愛知県名古屋市にある大学病院です。常に最高水準、世界水準の医療レベルを目指し、スタッフ一丸となって医療に取り組んでいる全国的にも有名な病院です。特に小児医療の分野での活動実績があり、国指定の「小児がん拠点病院」となっています。名古屋大学医学部附属病院は、全国から小児がん患者を受け入れている病院です。そのため、少しでも小児医療を充実させるため、実施。新生児搬送用救急車購入、新生児サイズに合う医療器具の購入、子供たちの心的負担を軽減するためのCT、MRI、PET-CTルームの装飾を三本柱にすえ、資金募集を計りました。支援者数は900名となり、目標金額の2,500万円を大きく上回る3658万円の支援金額を達成しました。
2. 沖縄離島の急病患者を救うために医療用飛行機を購入したい!
https://readyfor.jp/projects/mesh
【実行者】医師 小濱正博
沖縄県名護市 北部地区医師会病院 副医院長/認定NPO法人メッシュ・サポート 理事長
【実施期間】2015年03月4日~2015年6月1日
【達成金額】3629万1000円
【支援者数】445名
【概要】沖縄県名護市は「医療過疎」とも呼ばれており、救急医療活動を行う際に使われる救急ヘリは日本で唯一「民間からの寄付」によって運営されています。。しかしながら、現在のヘリでは移動距離の都合上、離島に住む方々への救助が不可能であるという現状がありました。そこで、離島まで飛行できる「医療用飛行機」を購入するためのクラウドファンディング を実施し、最終的に445名もの支援者が集まりました。
3. 小児がんと戦う、みんなの願い。不足する無菌室をつくろう!
https://readyfor.jp/projects/ncchd-clean-room
【実行者】松本公一国立成育医療研究センター小児がんセンター長
【実施時期】2017年7月5日〜2017年9月8日
【達成金額】3116万2000円
【支援者数】1861名
【概要】
国が指定する「小児がん拠点病院」として、小児がんの治療や支援、医師や看護師などの人材育成に力を入れています。 「無菌室」の利用が必要な患者さんは、2018年には30名いらしたそうですが、それに対して無菌室数は2床だったとのことです。そういった背景があり、無菌室の新設とリニューアルを行うことをメイン目標とし、もしも資金が十分に集まれば無菌室に関連する医療機器の購入などにも充てるためのクラウドファンディング を実施し、最終的な支援者数は、1,861人にものぼりました。
4. 命を守るため、365日地球10周分走ったドクターカーの危機を救おう
https://readyfor.jp/projects/kodomodoctorcar
【実行者】原田 順和(長野県立こども病院 院長)
【実施期間】2017年2月14日〜2017年4月20日
【達成金額】25,366,000円
【支援者数】962名
【概要】
長野県は安曇野市にある予約制の小児専門病院として、全国から患者さんを受け入れています。激しく老朽化が進み、ガムテープで補修して利用していたドクターカー。運営主体は「独立法人長野県立病院機構」であり、国や県などの補助ではドクターカーを購入することが不可能だという背景がありました。新しいドクターカーを購入し、設備を揃える資金として実施しました。最終的な支援者数は、962名となっています。
5. 命の危機にある赤ちゃんのために、最新の保育器を購入したい!!
https://readyfor.jp/projects/moko
【実行者】和田和子 大阪母子医療センター新生児科主任部長
【実施期間】2017年9月12日~2017年10月27日
【達成金額】1003万6000円
【支援者数】392名
【概要】
大阪府和泉市の周産期・小児医療を専門とする医療機関、大阪母子医療センター新生児科の主任部長をつとめていらっしゃる方です。主に地域の病院では対応が困難な、ハイリスクな妊産婦、乳幼児などへの診療にあたっていらっしゃいます。緊急の治療が必要な新生児のために、保育器を載せたドクターズカーを利用してきた病院です。しかしながら、その保育器とドクターズカーが経年劣化しており、新しい保育器とドクターズカーを必要としています。今回は特にドクターズカーに搭載するための新しい保育器を購入する資金として、クラウドファンディング を実施。支援者数は、392人でした。
病院の研究関連のクラウドファンディング 事例
6. ぜん息の子どもと親の負担を減らしたい。新しい治療法への挑戦
https://readyfor.jp/projects/difto
【実行者】勝沼俊雄(東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科)
【実施期間】2017年11月17日〜2018年1月31日
【達成金額】16,348,000円
【支援者数】660名
【概要】
東京慈恵会医科大学附属第三病院は、東京都狛江市にある大学病院です。その病院の小児科の診療部長が実行者です。日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会などの要職も兼任していらっしゃいます。
乳幼児喘息患者を対象として、吸入ステロイドを毎日投薬するのではなく、風邪をひいた時などだけ行う「間欠吸入」が毎日の投薬と同じだけの効果があることを証明するための臨床研究を行うための資金です。この研究により、ぜん息で苦しむ子どもとその親の負担を軽減することが目的です。今までは公的研究資金で行ってきましたが、その資金が終了したため資金集めを実施しました。支援者数は660人にものぼりました。
助産師の事例
7. 育てられず悩む妊婦や女性を24時間救える「いのちのドア」開設へ
https://readyfor.jp/projects/inoti-door
【実行者】一般社団法人小さないのちのドア(永原 郁子・マナ助産院)
【実施期間】2018年5月14日~同年6月29日
【達成金額】6,698,000円
【支援者数】387名
【概要】
実行者の永原氏は1993年にマナ助産院を開業し、出産・子育て支援を行ってこられた方です。2000年には性教育を行うグループである「いのち語り隊」を発足し、学校などで教育活動にも従事してこられました。その功績が評価され、厚生労働大臣賞をはじめ、現在までに数々の表彰を受けてこられました。妊娠したけれど出産できずに悩んでいる女性や、出産したけれど育てられずに困っている女性を対象に、24時間、保険証なしで相談できる「小さないのちのドア」という名前の無料相談所を開設し、運営していく資金を募るために実施しました。日本でそういった女性たちを無料で救うという活動を実施しているのは、「赤ちゃんポスト」で有名な熊本県の「慈恵病院」のみであるという現状を背景に、こういった活動が始まりました。最終的には387人もの支援者を集めることができました。
資金調達としてだけではない医療とクラウドファンディング
本記事では、近年増えてきている医療機関のクラウドファンディング 事例で多くのご支援者にささせられ、成功している事例をピックアップしました。
クラウドファンディング には資金調達というイメージが強いですが、クラウドファンディング には、単なる「資金調達」だけでなく「応援者を増やす」「社会からの注目」を受けやすくなるといった効果もあります。
医療機関や福祉施設によるクラウドファンディング は、困窮している医療(福祉)機関や地域のためになるだけでなく、安定した医療の提供に対する、世の中に関心をもってもらう手段としても注目できるのではないでしょうか。
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