失敗しない歯科医院開業準備リスト!資金・年収・平均年齢・届出

2019.10.31 02:52

歯科医師として働いていて、自分の技量に自身がついてきた頃に、頭の片隅に浮かんでくるのが開業という道。

おそらく、自分の治療の理想を追求したいから開業するという動機の方が大半だと思います。

 

しかし、医院を運営するということは、診療だけではなく、ローンを返済しながら、スタッフの人件費や社会保険料を支払い、“経営”をしなければならなくなるので、開業を成功させるためには開業前からの下調べとマーケティング、綿密な事業計画が非常に重要になってきます。

 

後でも費用に関して出てきますが、開業には数千万かかりますが、調べる、イメージするだけならタダです。

 

今回は、開業は全く考えたことなかったという方から、開業しようかどうしようかどうか迷っている方のために、これだけ読めば開業準備のための知識や調べるべきものが網羅できるように、歯科医師が本気でまとめてみました。

※行政関係の項目は2019年6月時点の内容となっておりますので、実際に手続きをする際には、各管轄の行政機関にご確認ください。

 

 

歯科医院を開設するために必要な資格は?(注意:管理とは別)

個人の場合歯科医師国家資格

歯科医院を開設できるのは、個人の場合は、臨床研修が修了した歯科医師が開設できます。

 

医療法では歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第十六条の四第一項の規定による登録を受けた者とされています。

 

医療法人の場合:開設地の都道府県知事等の許可を受けなければなりません。

医療法第2章 病院、診療所及び助産所〔開設許可〕第七条 を参照されるのをお勧めします。参照①(ページ最下部に各種リンクをご用意しています。)

 

法律上は誰でも医療法人を開設できることになっていますが、実際は非医師・非歯科医師の場合には、許可を得るのは厳しいようです。

 

非医師を代表とする医療法人の数は全国で約367法人(H15年)と非常に少なく、過去5年間(3年間)にわたって、医療機関としての経営が安定的に行われ、 かつ、法人としての運営も適正に行われている既存の法人であること。など厳しい基準があります。(参照②)

 

歯科医院を開業するメリット・デメリット

勤務の歯科医師をする場合と比べて、歯科医院を開業するメリット・デメリットをあげていきます。

歯科医院を開業するメリット

①理想の治療ができる

②自分のスケジュールで診療日を決められる

③ビジョンを描ける

④うまくいけば、勤務医より収入が良くなる。(場合による)

やはり、開業すると、自分の、好みの材料などを使って、理想の治療ができるようになるのが大きいのではないでしょうか。

また、スケジュールも自分が責任者なので、勤務よりは裁量が大きいです。

また、個々の治療も理想を追求しやすいですが、この地域の虫歯を0にするなど、地域貢献などの少し大きめなビジョンももちやすくなります。

 

歯科医院を開業するデメリット

①経営をしなければならない

②スタッフを集め・教育・マネージメントする必要がある

③多様な属性の患者はみれなくなる。(地域に縛られる)

④クレームなどを対処する可能性(勤務に比べ)

スタッフ・患者・お金のマネージメントが必要になることが、勤務医との一番の違いです。

また、運営しているだけで人件費・医院等のコストがかかるので、自身の健康面のマネージメントもしっかりする必要があります。

経営経験のある方ならわかると思いますが、勤務医だと、休んだら0になるのが、開業医だとマイナスになってしまうというイメージです。何もしてなくても場所の維持費や税金・社会保険料などがかかってきます。

診療や、経営の代わりができる人を見つけ、何医院も経営することもできるかもしれませんが、やはり責任や局所局所での判断は経営者になるので、倒れるわけにはいきません。

 

歯科医院開業の平均年齢

結論から言うと、行政などの公のデータはありません。

歯科医師の統計データを、参考までにご紹介すると、歯科医師全体の平均年齢は47.9才です。

(診療所勤務の歯科医師の平均年齢49.8才病院勤務の歯科医師の平均年齢35.7才。)

(厚労省「施設の種別・年齢階級別にみた医療施設に従事する歯科医師数」より)

 

このデータだけでは一概には判断できませんが、インターネット上の各種サイトの記載からと、業界内のイメージだと30代半ば〜40代で開業するような印象が一般的なようです。(筆者も歯科医師ですが、概ねそのような認識で合っていると思っています。)

ちなみに医師の場合は開業平均年齢41.3才(日本医師会2009年)です。(リンク④)

 

歯科医院開業の平均年収と勤務の平均年収

歯科医師(勤務) 月81万2299円

(人事院 (平成29年職種別民間給与実態調査 表5 職種別従業員数、平均年齢及び平均支給額)

 

歯科医院(個人開業)         月 98万9166円

損益 1187万9000円/年より算出。税金は差し引き前の金額

(平成29年度 医療経済実態調査 厚労省 )

 

上記は、勤務の歯科医師の平均年収と個人開業の歯科医師の平均年収です。これを、みて、え!?あまり変わらない!と思いますよね。

衝撃的の事実ですが、データで見ると、開業も勤務も年収は大きくは変わりません。

しかし平均値ですので、開業のエリアや、診療科目によっても異なると思われます。

何を目的に開業したいのか、理想的な治療をするため、収入を増やしたいため、目的は様々だと思います。しかし、いくら理想的な治療ができたとしても、赤字になってしまっては持続できません。

開業してみないと実際の患者さんがどれだけくるかは、わかりませんが、ある程度であれば、理想的な治療のためのコスト(材料費・人件費・設備等)、開院する時間・日数、想定患者数を算出してデータから予測することは可能です。

開業を迷っていたら、理想とする環境を実現するにはどういう収支になるのか、一度シミュレーション(「診療圏調査」)してみるといいでしょう。

 

歯科医院開業の平均費用・自己資金と融資・資金調達について

歯科医院開業の平均費用

歯科医院開業の費用は、立地などにもよりますが、概ね4~5000万円以上は必要と一般的にいわれることが多いです。

 

歯科医院開業資金の使用用途の内訳

まず、使用用途により、設備投資資金・運転資金の二つに分けて考えます。

 

①設備投資資金

初期の内装・外装や医療機器などの設備に必要な資金。

・賃貸費用(敷金・礼金・家賃1年分・仲介手数料など)

・内装・外装費用

・医療設備(レントゲン・ユニット・レセコン・電カル・予約システム・オートクレーブ等)

・その他院内設備

・材料費

・広告費(ホームページなど)

・求人費用

 

②運転資金

開業した初日から、いきなり、安定して収益が出るほど患者さんがくることはほぼありません。

収益がまだない状態で、患者さんが集まって、安定した運営をできるようになるまでの人件費等をまかなうための資金です。保険診療の場合は、国に申請してから2ヶ月後に診療報酬が入ってくるため、最低でも2ヶ月程度は無収入だとみておく必要があります。すでに固定患者がいるなど、確実なことがない限りは余裕をもって6ヶ月分ほど運転資金を見積もっておくことが多いようです。

 

歯科医院開業の資金調達・出資元の内訳

開業資金は概ね4、5000万と記載しましたが、全てを自己資金で資金調達する必要はありません。自己資金は1000万円程度が目安になることが多いようです。残りは、融資を利用することが一般的です。

①自己資金

歯科医院開業の自己資金の目安は1000万円。多ければ多いほど融資を受けやすいので、自己資金が多いことに越したことはありません。

例えば、35歳で開業を目標にするとしたら、ストレート計算で大学24歳卒業、研修医終了時25歳から1年100万円ペースでの貯金ができていれば開業できる計算になります。今のあなたの年齢、貯金額から考えてみましょう。1000万円はあくまでも目安で、それに及ばなくても、融資を受けられる場合もあるので、具体的に開業を考えている場合は、融資が可能か金融機関等に問い合わせてみても良いでしょう。

 

②融資(家族・銀行・医療設備のリースなど)

融資を申請する先は以下のようなものがあります。

・日本政策金融公庫など https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/

・金融機関(メガバンク・地方銀行など)

 

・リース(高額な医療設備を購入ではなくリースにすることで、初期設備投資をおさえ、キャッシュフローを調整する)

 

【豆知識】市区町村などで事業者や中小企業向けに融資の補助や創業支援融資などをしている場合があり、補助を利用すると数分の1程度に金利がおさえられることもあるます。管轄の自治体に早い段階で相談してみるといいです。

ある程度、金融機関とつきあいのある業者から入ってしまうと、わざわざ補助に関して教えてくれないと思われるので、自治体での融資制度や支援制度の有無と、要件にあてはまるかどうかを自ら調べて、自治体の窓口に相談にいくと良いと思います。

「自治体名 中小企業(小規模事業など) 融資」などキーワードをいれると出てくるはずです。

例) 札幌市中小企業融資制度 https://www.city.sapporo.jp/keizai/center/

 

 

③国や自治体の補助金・助成金

補助金・助成金には申請に要件があるので、該当するものがあれば検討できます。

しかし、書類申請・審査・手続き、がありかなり手間がかかります。また、補助金に合格しても、実際の支払い時に全て審査を通り、支払われる保証がされるものではないので、あてにしない方が良いです。

補助金が支払われるのは、審査等を終えてかなり後になるので、当たればラッキー・むしろ手続きの費用対効果がない場合もある程度に捉えておくと良いです。

(補助金に関しては以下の記事もご覧ください。)

【開業資金調達】医院やクリニックにもチャンスあり?!な国の補助金・IT導入補助金

 

④クラウドファンディング

今の時代だと、資金の一部をクラウドファンディングで集める という方法もあります。医院がクラウドファンディング を実施することはあまりないと思いますが、コンセプトが人に共感できるものであったり、社会的に意義がある施設だとプロジェクトを実施できる可能性もあります。

例えば、歯科医師のいない島や村に歯科医院を作るなど。

運営が厳しい病院などのクラウドファンディングも過去に実施されていました。

(クラウドファンディングについてはこちらの記事をご参照ください)

 

 

歯科医院開業のための手順とスケジュール

 

開業するまでに一体どんな手順が待っているのか、最短期間で実行するためのおよそのスケジュールをシミュレーションしました。

⓪なんとなく段階

・開業する目的、医院のコンセプト・時期・規模・資金計画(自己資金+借り入れ/内訳)を考える

・コンセプトに合うエリアを調べる(エリアからコンセプトを考える)

・物件を調べる(もしくは居抜きなど、M&Aを検討)

 

②準備段階

(・開業コンサルタントに相談する(利用する人は))

・融資の相談をする

・物件・内装・設備などの見積もりをもらう

・管轄の厚生局に相談

医院のレイアウトや、医院名に関して修正が必要になる場合があるため、早めに相談にいっておくとベスト。

・物件を選定する

・事業計画に落とし込む

・融資を申請

融資が実行されるまで最短でも約1ヶ月程度はかかる。

 

③本格準備段階

・集患準備

・ホームページ

・求人

・内覧会

 

④施設完成

ついに完成!とうかうかと喜んでいられないほど、しなければならないことがたくさんあります。③の準備・手配と次の⑤手続き関連です。

 

⑤手続き段階

10日以内に届出。

 

⑥初期運転段階

用意していた、運転資金で人件費等をまかないながら運営します。

 

⑦通常運転段階

診療報酬が入ってきて、収支から人件費などを支払えるようになったら、通常運転段階です。最低限のスタッフで初めていたら、状況に応じ、求人などが必要になる時期かもしれません。

 

歯科医院開業に必要な行政手続きと流れ(個人が開業する場合)

①診療所開設届出(管轄の厚生局)

0.事前相談:開業エリアの管轄の厚生局へ開設スケジュール(見込み)、平面図、提出書類等で準備可能なものを持参。

施設完成

1.開設開設後10日以内に開設届を提出。

2.届出:実査後に副本を受け取り。

3.実査:保健所の監視員が実地審査。

4.社会保険手続き:開業エリアの管轄の社会保険事務局への手続き

5.保険診療開始:開業エリアの管轄の厚生局への手続き。(届出先の確認はこちら)

 

保険医療機関の申請(申請先:管轄の厚生局)

開業エリアの管轄の厚生局へA4 2枚程度の書類を提出する必要があります。(様式は各エリア管轄の厚生局のホームページ等をご確認ください。)

保険医療機関の申請に必要な書類(1種類) 

※各月ごと締め切りになります。

 

保険医療機関申請手続きの流れ

  1. 1.医療機関(薬局)→厚生局に指定の申請
  2. 厚生局から指定通知書の通知がきます。

地方社会保険医療協議会への諮問を経て、指定を行った場合、「指定通知書」が発送されます。各厚生局のホームページでも公示されます。

 

歯科医院開業に必要な書類リストと取得できるリンク(個人開業)

こちらは東京都福祉保健局の案内を参考に記載しております。(2019年6月時点)開設エリアの管轄の保健所の案内を参照してお手続きをしてください。(管轄リストはこちら)

 

歯科医院開業に必要な書類リスト13!

(個人が開設する場合)

 

実際に記入作業が必要な書類をかっこなし、コピー作業のみ必要な書類を、【】かっこつきで表記しています。

従業員に国家資格免許を借りる必要がある書類もありますので、アナウンスをしておくと親切ですね。

 

診療所開設に必要な書類リスト(13種類)

 

診療所開設手続き:提出先 所轄の保健所等

 

1. 診療所(歯科診療所)開設届

診療所開設届(第7号様式)(Word:131KB)

歯科診療所開設届(第8号様式)(Word:78KB)

2. 【管理者の医師又は歯科医師の臨床研修修了登録証の写し及び免許証の写し】

確認のために原本が必要

3. 管理者の履歴書

4. 【診療に従事する医師、歯科医師の臨床研修修了登録証の写し及び免許証の写し】

確認のために原本が必要

5.【 業務に従事する助産師・薬剤師・歯科衛生士等の免許証の写し】

確認のために原本が必要

6. 【土地及び建物の登記事項証明書】(発行後6ヶ月以内 原本・写し1部)

7. 【土地又は建物の賃貸契約書の写し】(確認のため原本持参)

8. 敷地の平面図

9. 敷地周辺の見取り図

10.建物の平面図

ビル内の診療所の場合は、利用する階全体の平面図

11.エックス線診療室放射線防護図(エックス線装置を備え付ける場合)

12.エックス線装置備付届

エックス線装置を備え付けた場合、別途、設置後10日以内に届出。(リンク

診療用エックス線装置を備える場合)

13. 診療所(歯科診療所)への案内図

 

保険医療機関の申請に必要な書類(1種類)

14. 保険医療機関の申請書類(1種類)

(※各月ごと締め切り,申請先:管轄の厚生局)

 

まとめ

以上、歯科医院開業の際の大まかな開業の流れをまとめました。

この記事には、やることや手続きは詰め込みましたが、1つだけ大きなことを書いていません。

それは、経営者である「人」の中身の準備です。

歯科医院の経営者として、患者さん・従業員に信頼される人間であることはもちろん、経営の知識・センスがなければなりません。

 

診療もしながら、ホームページ制作、ロゴデザイン、Webマーケティング、内装デザイン、求人、スタッフ教育、、、やることが山ほどあります。

 

全てのディレクションを完璧に行うことは、スーパーマンでない限り無理です。足りないところは賢くアウトソーシングしましょう。そのためにも、どういうことが必要になるのか、自分でできること、できないことの判断が必要になってきます。

 

この「Dspace Plus」の「開業・経営」カテゴリーでは、そういったアウトソーシングするために必要な知識や専門家からの知識やアドバイスなどを効率よくつかめるような記事も更新していく予定です。

 

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役立つ参照リンク集

 

本文参照リンク①厚生労働省 : 医療法抜粋https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/shikarinsyo/gaiyou/kanren/iryo.html

 

本文参照リンク②

厚生労働省 : 医 師、歯科医師以外の者を理事長とする認可(厚生労働大臣所管の医療法人の場合)

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/tetuduki/rijityouyouken.html

 

参照リンク③医療法人の非営利性の確保状況等に関する 都道府県等調査の結果について

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/kentoukai/4kai/07.pdf

 

参照リンク④日本医師会 開業動機と開業医(開設者)の 実情に関するアンケート調査(2009)

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20090930_21.pdf

 

参照リンク⑤労災保険指定医療機関になるための手続きについて

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000060772.html

 

参照リンク⑥雇用保険関係手続き 電子申請のご案内

https://www.mhlw.go.jp/shinsei_boshu/denshishinesei/dl/koyouhoken_tetsuzuki.pdf

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