【歯科 × 3Dプリンター】3Dプリンターを活用する歯科医院になるか、ならないか。

【歯科 × 3Dプリンター】3Dプリンターを活用する歯科医院になるか、ならないか。

2020.06.23 09:00




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今回は歯科と3Dプリンターについて、機械工学修士と歯科技工士のダブルライセンスを持つ、有限会社睦デンタルセラミック専務取締役 青木秀馬氏に歯科業界での3Dプリンターのトレンドについて筆をとっていただきました。

 

 

2020年名古屋デンタルショーでは国内初となる薬機法の認可(クラス2)を取得した3Dプリンターで作られた義歯が展示されていました。歯科界に3Dプリンターの波がいよいよやってくる雰囲気を感じました。

 

現在の歯科界で3Dプリンターというと、アライナー矯正が主な用途でしょう。種々の商品の中で代表といえばアライン・テクノロジー社が提供するインビザラインです。彼らのビジネスを支え矯正歯科に革命をもたらした技術が3Dプリンターです。

 

単衣に3Dプリンターと言っても、アマゾンから数万円程度で買える機種から産業用の数千万円する機種と様々です。また造形方法の違いにより適する用途が変わってくるなど、ビジネスに落とし込むにはそれ相応の知識が求められる状況となっています。

 

本記事では、まだ3Dプリンターを手に取ったことがない歯科開業医、歯科関係者向けに、読むだけで歯科での3Dプリンター活用の方法やコストまで具体的イメージがつかめるようになるアウトラインを解説します。

 

 

3Dプリンターと相性が良い歯科の診療科

 

 

1. 矯正歯科

2. インプラント

3. 模型のデジタル保管

4. プリント義歯

 

 

矯正歯科 × 3Dプリンター

 

3Dプリンターと相性がいい歯科の診療科として、最初にあげるのは矯正歯科です。

 

従来、セットアップ模型を作成するなどアナログな技工操作には大きく工数を割いています。それに対して、口腔内スキャナから印象採得された歯列データをCAD上でセットアップし、設計データを造形した後、シートを圧接し完成すれば、3Dプリンターを導入することで工数を大幅に圧縮することができます。

 

つまりメーカーに頼らずとも自医院に各種機材を導入することで自医院内でアライナーを製作することが可能になるわけです。

 

 

インプラント治療 × 3Dプリンター

 

次にあげるのはインプラントです。サージカルガイドを用いた埋入オペを行うのであれば、3Dプリンターを導入してガイドを造形することで外注コストを抑えることができます。また、納期も短縮可能になることでアポイントの自由度が高まるメリットも生まれてくるでしょう。

 

以上二つは特筆すべき活用方法をあげましたが、一般歯科においても活用方法はあります

 

 

歯列模型保管 × 3Dプリンター

 

歯列模型の保管スペースに困っているドクターにとっては救世主になりえる可能性があります。歯列模型のデータ化をラボに依頼しHDD等の記録媒体に保存する。必要に応じて上や3Dプリンターで造形することで、今設けている模型保存スペースを別の用途で活用することが可能となります。以上のように、3Dプリンターはデジタル化されたものをアウトプットする必要がある場面が活躍の場です。

 

 

義歯製作 × 3Dプリンター

 

最後にご紹介したいのがプリントデンチャーです。これからは義歯をプリンターで作る時代がきます。口腔内スキャナから総義歯を作るための研究も行われております。デジタル設計された義歯を製作する方法はミリングでもプリントでもいずれも対応可能です。ただ、ミリングは時間がかかる他、大きなアンダーカットには対応できません。かたや3Dプリンターは複雑な形状を造形することが可能であり、同時に複数作れるというメリットが活きて来ます。このような観点から義歯と3Dプリンターは相性が良いと言えるでしょう。

 

ただ、現在の国内ではプリントデンチャーの臨床例は大学病院に限られるようです。薬機法の制限もありますが、一番の問題はコストでしょう。保険のようには安く作れないことや、自費にしても相応のメリットを訴求することは難しいためです。ただ、“繰り返し同じものを作れる”3Dプリンターの利点を活かして、紛失・破損時にはすぐ再製作することができるでしょう。今後の動向に注目です。

 

 

 

3Dプリンター導入に必要な設備・スキル

 

3Dプリンターを取り扱うために特別に必要なスキルや資格は必要ありません。しかし、3Dプリンターを買ってきてもすぐに造形を始められるわけではありません。

 

何らかの形で3Dデータを準備する必要があります。例えば口腔内スキャナを用いてスキャンし歯列のデジタルデータを得る、もしくは、データをもらう必要があります。

 

次にそれらはCADソフトを用いてプリント模型の形に編集する必要があります。

 

現在、口腔内スキャナの価格は下落傾向であり300万円程度で購入できる機種もあります。また、ラボに模型のスキャンだけをお願いすれば数千円の費用がかかるでしょう。プリント模型にするためのCADソフトも100万円以上するものもあります

 

独自に用意しようとすればイニシャルコストがかさむため、初めはラボに依頼することが望ましいでしょう。

 

実際の造形には付属のCAMソフト(無料なことが多い)で造形準備を行います。

具体的な操作は造形物の配置やサポートと呼ばれる支柱のレイアウトなどの操作を行います。

 

初めて取り扱う方はメーカーの導入レクチャーを必ず受けてレジンの充填方法や管理方法、造形物の取り扱い方法などを熟知する必要があります。

 

 

歯科用3Dプリンターの標準的な造形フロー

 

 

では、標準的な造形フローの手順の概要を紹介します。

 

 

歯科用3Dプリンターの標準的な造形フロー

 

  1. 1. CADデータの準備(CADから歯列模型をエクスポートするなど)
  2. 2. 造形データの準備(CAMソフトによってサポートの植立し、本体へ転送)
  3. 3. 本体の準備(造形台の確認、レジンの注入・攪拌やレジン温度の確認など)
  4. 4. 造形
  5. 5. 造形物の取り出し、洗浄
  6. 6. 二次重合(必要に応じて)

 

 

特に取り扱う上で注意すべき点は2つです。レジンにはモノマーが含まれているため、直接手で触ることはせず、グローブをつける必要があります。次に洗浄時に有機溶剤(IPAなど)を扱うことから換気が良いことが望まれます。

さて、3Dプリンターを扱う上でコツというものが存在します。

 

例えば造形の向きによって精度が変わってくることや、使うレジンの消費量も変化します。また、造形エラーを防止するサポートの立て方など、ノウハウがあります。使う3Dプリンターによって勝手が異なるため、使っていくうちに多くの気づきを得ることができると思います。

 

趣味の一つと考えればこのプロセスは楽しいものですが、熟知された方から知恵を買うというのも手段の一つです。

 

 

3Dプリンター活用技術検定

画像 : 3Dプリンター活用技術検定試験サイトより引用

 

一般化された知識を得たいのであれば、『3Dプリンター活用技術検定』 (一般社団法人コンピュータ教育振興協会) という検定試験制度があります。(受験料 8,000円+消費税)

 

https://www.acsp.jp/3dp/ind.html

 

試験は年二回実施されます。出題範囲は、コンピュータ教育振興協会が作ったガイドブックからとなります。体系的に知識を習得することで、新しい使い方や治療への活用方法が発見できるかもしれません。

 

なお、筆者は2018年10月に本資格を取得しております。

 

 

歯科医院での3Dプリンター利用のコスト 

 

3Dプリンターの実際のコストは気になるところだと思います。本記事では、使用頻度に分けておすすめ機種を紹介していきます。

 

ケース①:1-3造形/日

100万円前後の機種で十分対応できます。

費用の内訳を見ていくと、本体が70万円、洗浄機10万円、二次重合機10万円、保守サポート費用10万円といった感じでしょうか。洗浄機や重合機は今あるものが使える場合もありますので省く選択もありです。ただ、保守サポートは必須です。

 

ケース②:5造形以上/日

300万円以上の機種がオススメです。

大きな造形台と造形速度がポイントになってきます。周辺機器やサポート費用もケース①よりも高くなります。また、多くの造形が必要になればランニングコストが増えることに注意が必要です。

 

 

3Dプリンター用レジンを知る

 

メーカーは本体にチューニングした純正レジンを販売しています。そのため、純正以外のレジンを使うと思い通りに造形できないことがあります

 

歯科用として販売されているものは薬機法の届出されているレジンです。同じレジンでも工業用でも販売されていることもありますが、それを使った場合メーカーのサポートは受けられない可能性がありますから、安心を買うために純正レジンを使うことをお勧めします。

 

レジンの価格は口腔内に入れない模型用は比較的安価で2〜3万円/L程度です。一方、サージカルガイドなど口腔内に入れることができるレジンは4〜7万円/Lと高価です。

 

生体親和性を持たせつつ、安定した造形性を得るためにはどうしても高価になってしまうのでしょう。書くまでもないですが模型用の安価なレジンは口腔内では使用してはいけません。レジンアレルギーに対しては取扱上留意すべき点です。

 

 

3Dプリンターの造形に要する費用

 

実際に造形するためにはデータを準備するためは口腔内スキャナやCADを用いるわけですが、今回は単純に造形に要する材料費用の参考としてご覧ください材料費にはレジン代、洗浄液代、その他消耗品代を含んだ概算値となります。

 

 

ケース① サージカルガイド
1,500円前後 造形時間約1-2時間

 

ケース②クリアアライナー
1,000円前後+シート代 造形時間1-2時間

 

ケース③歯列模型
1,000円前後 造形時間1-10時間

 

 

いずれも1,000円程度の材料費です。3Dプリンターの材料費は造形物の容積によってきまるため、口腔内のサイズは大きくても15ml程度です。

 

繰り返しになりますが、実際にかかる費用には人件費や減価償却費、光熱費が加算されてくるため、医院の状況により変わることに留意してください。

 

 

メジャーな歯科用3Dプリンターメーカー 5選

 

 

Formlabs(アメリカ)

画像: 株式会社YOKOITOより引用

 

代表機種:Form3B
https://www.dental.form2.shop/form3

全ての用途に適する万能型。初めて3Dプリンターを導入される方に一番オススメしたい機種。PC上で行う造形準備はワンクリックのオートモードがあり、そのまま本体に転送されすぐに造形できる。

 

本体価格 (目安) 60万円

 

 

Rapid Shape(ドイツ)

画像: Rapid Shapeより引用

 

代表機種:D20+
https://www.corefront.com/3dprinter01.html

造形速度が速いことが最大の特徴。アライナー用模型を大量に製作したい方向けの機種である。また、レジンがカートリッジ式を採用し院内での取り扱いを容易にした設計が施されている特徴を有する。

本体価格 (目安) 定価340万円

 

 

UNIZ(アメリカ)

画像:UNIZより引用

 

機種:Slash2
https://www.xn--5ck4bxctb.com/slash2

安い・速いを重視するのであればこの機種をオススメしたい。また、4K液晶を使うことで高精細な造形が可能となる。使えるレジンは純正以外にも対応しており、各種パラメーターも操作可能な点から上級者でも満足の機種である。

本体価格 (目安) 70万円

 

stratasys(イスラエル)

画像:stratasysより引用

 

機種:OBJET260
https://www.stratasys.co.jp/3d-printers/objet260-connex3

他の5機種とは異なり、インクジェットプリンターのようにレジンを吹き付けて造形する方式を採用している。そのため色つけが可能となることが最大の特徴。その分高価となるため、一般歯科医院向けとは言えず大学病院向けの機種である。

 

本体価格 (目安) 2000万円

 

クルツァージャパン(日本)

画像:Kulzer GmbHより引用

 

機種:cara Print 4.0
https://www.kulzer.co.jp/ja/ja/digital/digital_start.aspx

国内で唯一薬機法の認可を取得した義歯床および人工歯用のレジンが造形可能な機種である。その特徴だけではなく、鋳造用レジンが非常に高速で造形可能という特徴を有する。なお、現時点で、義歯用レジンは未発売だが、近日中との噂である。

本体価格 (目安) 300万円

 

※価格は参考とし、歯科ディーラーに直接お問い合わせください。

 

 

 

まとめ 

 

今回3Dプリンターについてご紹介できた内容はほんのわずかです。スマートフォンのように2年もする古い機種となってしまうような進化していくスピードがとても早い世界です。

 

導入するに際しては、どのように使っていくのかを吟味する必要があるでしょう。また、導入後も継続して情報を収集することで新たな活用法が見えてくる可能性もあるでしょう。

 

今回はあえて格安機種はご紹介しませんでした。安価な機種の中も性能に申し分ない機種があります。ただ、操作性が良くないことやサポートが十分でないなど初めて導入される方には難しさがあるからです。3Dプリンター活用技術検定を取得された後や2台目以降ですでに使い勝手が理解できている方にオススメしたいです。その際にはFacebook等の海外コミュニティを覗くと興味深い発見が多いので覗いてみてはいかがでしょうか。

 

さて、今後の発展を考える中で注目すべきは3Dプリンター義歯です。現在はおそらく大学病院等の研究目的で使われているのみだと考えられますが、保険収載が実現したところから歯科での3Dプリンターの第二章が始まると言っても過言ではないでしょう。

 

そうなった時に一度も触ったことがない人と、日常的に使っている人とでは大きな差が生まれてくることに違いありません。備えるために買うという話ではないですが、現在の仕事の中において活用できそうな部分があるかどうか考えてみて、もしあるのならば導入を検討されても良いのではないでしょうか。

 

 

 

青木秀馬

有限会社睦デンタルセラミック 専務取締役

2009年武蔵工業大学大学院機械工学専攻修了後、自動車メーカーにて設計開発に従事。

2017年歯科技工所から歯科界を変えていきたいと意気込み転職、それと同時に東京医科歯科大学口腔保健工学専攻に編入学。歯科技工士免許取得し、現在に至る。

 

 

 

有限会社睦デンタルセラミック

ジルコニア等の自費補綴から義歯までを取り扱う一方、3Dプリンターの活用事例を東京デンタルショー(2019)で展示するなどデジタルワークフロー構築のノウハウを積み重ねて来ている。近日中には歯科医院向けの3Dプリンターコンサルディングサービスを展開予定。(お問い合わせは以下メールアドレスまで)

[Web]http://www.mutsumi-dc.co.jp
[mail]shuma.aoki@mutsumi-dc.co.jp

 

 

 

[3Dプリンターコンサルに関してのお問い合わせ]

 

歯科技工士 青木氏が取締役を務める有限会社睦デンタルセラミックに3Dプリンターについてのコンサルを希望される場合は、上記 プロフィール欄のメールアドレスまでお問い合わせください。

(当サイトのお問い合わせとは異なりますのでご注意下さい。)

 

 

 

 

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