#33 実習で将来像に出会い入局。口腔外科指導医を目指す歯科医師。
2020.04.23 17:00
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医療職の人生の視野を広げるDspace Plus「のぞき見みんなのキャリア」33回目の今回は、口腔外科医として大学病院でお仕事をしている歯科医師のezkuzuha先生です。
キャリアについてのお考え、専門医取得までの道のりなどについて教えていただきました。ぜひご一読ください。
写真はイメージです。
ezkuzuha
卒後17年。研修医、大学院を経て、主に大学病院勤務。専門は口腔外科(日本口腔外科学会専門医)。親知らずの抜歯から口腔がんの治療まで、幅広く診療。
結婚して娘もいます。妻と娘がたいてい結託するので、決め事は2対1で自分の意見はまず通りません(笑涙)。
趣味は食べ歩き。グルメではありませんが、よく食べます。
ーまずはezkuzuha先生が歯科医師を目指したきっかけをお教えください。
私の親戚に何人か歯科医師がいます。一番近くに住んでいる叔父の歯科医院では母が歯科助手として働いていたこともあり、子供のころから時々歯石除去や、虫歯の治療などを受けていました。その雰囲気を見ていたので歯科医院への抵抗がなかったことと、人助けの1つとして将来こういう仕事もあるだな、と思ったのがきっかけです。
ーezkuzuha先生は、口腔外科の専門医を取得し、現在は大学の教員として勤められているとのことですが、口腔外科を専門として選んだ理由と、教員としてのキャリアに進んだ理由をお教え下さい。
まず、私が歯学部生の頃、臨床実習が1年間ありましたが、その最初が口腔外科の外来でした。(病棟は半年後にラウンド)。その時は少ないスタッフで多くの患者に対応していた状況で、まさに猫の手も借りたい忙しさを身をもって経験しました。
その中にいて、診療内容の守備範囲が広く、患者さんそれぞれの治療の全体像を想像して治療介入すること、医科の知識も求められることなど、また多忙にもかかわらず優しく教えていただいた教員の先生が、私の理想とする将来像になったことが理由です。まだなかなか追いつけていませんが。
自分が歯学部を卒業する時は、研修医は希望制であり、現在のように必修ではありませんでした。例年、学年の大半が研修医として同じ大学の病院に勤務していました。その際、自分の希望する診療科に直接応募することになっていました。そこで迷うことなく、先ほどの口腔外科の教員の先生の医局に入局しました。
ーキャリアの選択を悩んだことはありましたか?現在のキャリアに進むに当たって、どう決断しましたか?
悩むことはそうありませんでした。実家そのものは歯科医院ではないことから、帰るアテがないわけですが、見方を変えれば実家を引き継ぐという縛りがないので、まずは自分の専門を確立しようと思いました。
そこで、口腔外科で専門医になろうと思いました。そのために必要な症例数、年数などを考え、合わせて大学院生をして博士号も取りました。
ー現在は、臨床と研究と、どのように日々のお仕事を両立(スケジュール管理)されていらっしゃいますか?
日中は臨床で忙殺されます。夕方以降、土日が研究の時間です。論文を読んだり書いたりするのを主にしています。アルバイトの空き時間なども論文を読んだり書いたりしています。
臨床と研究内容が直結することが多い診療科なので、臨床の中で出た疑問を研究したりしています。
ーezkuzuha先生は、今後はどのようにお仕事をしていこうと考えていらっしゃいますか?
教授を目指すにはまだまだ業績が不足しています。政治力も必要だと思います。また会議など運営面で忙殺されている様子を見ると、自分はあまりその方面には向いていません。
それよりも、患者さんに向き合って、でも開業医さんでは対応できないような治療を、病院勤務で引き続き行っていきたいと思います。
ーお仕事の日はどのようなスケジュールで生活していらっしゃいますか?
口腔外科医 ezkuzuha先生の1日ののタイムスケジュール
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AM 6:30
起床
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AM7:00
通勤
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AM8:00
業務開始
回診、メールチェックなど
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AM9:00
診療開始
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PM12:00
昼休み
取れないことも多々
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PM17:00
診療終了
診療に関する書類整理など。
-
PM18:00
研究の時間。
空き時間に夕食
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PM23:00
帰宅
-
PM24:00
就寝
ー口腔外科専門医を取得するのは大変でしたか?現在キャリアを継続する上で、大変なことはありますか?
日本口腔外科学会の専門医取得はとても大変です。まず書類審査があります。書類に記載するのは手術を執刀した症例、また入院管理した症例について、それぞれ疾患別(抜歯、炎症、良性腫瘍、悪性腫瘍など)かつ、学会が決めた手術難易度に応じたノルマがあります。執刀した手術は詳細な文章および図示によるレポートが必要です。その他に学会報告、論文報告など、ノルマが多数あります。どのノルマが達成していないか、特にどの種類の疾患が不足しているかを常に確認し、担当させてもらう必要があります。
その書類審査を通過すると、次は筆記試験と面接試験があります。筆記試験は2時間でおよそ8題。「必要あればA3の用紙を追加でお渡しします」と試験官が言うくらい、膨大な記述量です。時間も足りないくらいでした。
その後に面接があります。書類審査の症例について、所見の説明、なぜその治療方針となったか、手術時に注意する事項は何か、など15分程度の面接があります。
しかしそれで合格、とはなりません。最後は実地試験があります。症例を正しく診断し、安全に全身麻酔下で手術を行うことができるかを見る審査です。
全身麻酔の手術症例を決めて事前に学会と日程調整し、当日は外部の試験官2名がやって来て、手術を見学(審査)します。私の場合は下あごに出来た大きな嚢胞で、神経の近くまで広がっているような症例にしました。
これをパスすると、立派な専門医の証明書がいただけます。
専門医のさらに上の資格には「口腔外科学会指導医」もあります。今はそれを目指して頑張っています。
このような目標に向かって進んでいくにあたり、症例を経験して治療できる施設(学会が定める研修施設)に所属している必要があります。キャリアを考える上で、この研修施設のどの程度の年数を在籍できるか考える必要があります。
ー専門医取得には根気と時間が要りますね。
現在の働き方ならではのエピソードや感じていることをお教えください。
口腔がんによる死亡率は46%と、高い状態で推移しています。
口腔がんの患者さんの治療をしていて思うのは、研修医の時期と現在を比較して、口腔がんの症例がより重篤になってから来院する事例が増えていると感じます。
当然、治療の選択肢も限られ、治療ではなく生活の質を高めることに重点をおかざるをえない事が増えてきました。
研修医の時期は小さながんの割合がまだ大きかったように思っています。早期発見・治療だったと思います。
がんは小さいうちなら小さい切除で済み、元どおりの日常生活に戻ることもできます。これを口内炎と思って塗り薬やレーザーを当てて長期間経過観察をし、その間にどんどんしこりが大きくなったので来ました、という症例が増えてきているように思います。早めに検査をして口内炎か、悪性のものかをはっきりさせておけば、とよく思います。
ー現在の歯科業界・医療業界で課題に感じていることはありますか?また、今後の歯科業界・医療業界に必要なものは何だと思いますか?
歯科については、米国のようにう蝕や歯周病予防に重点が置かれるようになることが必要だと思います。この予防に重点を置くことは、定期的なチェックが入ることですので、開業医の先生による粘膜疾患(特に口腔がん)の早期発見がより進むものと思います。
このことに関しては大都市と地方では事情が異なる部分もあろうかと思います。専門的な医療機関への通院しやすさ、交通の便などもあります。この解決策の1つとして、大きな病院の中に歯科口腔外科を開設し、地域の拠点となる病院を増やすことも必要だと思います。
ー最後に、読者の医療職の皆様に一言お願い致します。
歯科は命の入り口である「お口」を担当する診療科です。しっかり栄養を摂ることが人間の生きる上で極めて重要です。そのために歯科医師もできることを頑張っていきます。お口のことはまずお近くの歯科医師・歯科衛生士に御相談ください。
ーezkuzuha先生、今回は貴重なご経験をお話いただき誠にありがとうございました。口腔外科指導医取得に向けて一層のご活躍を祈っております。
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