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フリーランス歯内療法ドクターに聞く、専門の活かし方と医院にとってのフリーランスの活かし方

2019.11.09 17:06

今回は歯科の一分野である歯内療法を専門としたフリーランス歯科医師 時田先生に、キャリアの考えと、歯科医院にとってのフリーランスの活かし方について考えをお伺いしました。

 

ざっくりとした歯科用語の説明
まず、はじめに、インタビューの中でいくつか歯科用語が出てくるので、大まかに説明をします。(※の用語がこの後、本文中に出てきます。)
歯の外側は固いエナメル質で覆われていますが、その内部には、神経(歯髄)があります。虫歯(う蝕)が進行していくと、エナメル質、象牙質と脱灰が進み、しまいには本来は無菌的である、歯髄まで感染してしまいます。

歯髄への細菌感染が進むと歯の根の先(根尖)、まで炎症が波及し、骨まで波及してしまいます。根尖の炎症がある状態を根尖性歯周炎(※)と言います。
そこで、歯科では神経にまで及んだう蝕の場合には、歯髄や、歯の神経が入っている根管の治療を行います。この治療のことを歯内療法(※)と呼びます。世間的によく「根の治療」と呼ばれている治療です。根管は、人により形状も異なるため非常に困難な場合もあり、また根管療法の治療部位は、目視できないため、本格的な治療をするには顕微鏡が必要です。難しい症例の場合には特に経験と技術が必要になる治療です。時には、過去の治療器具が残留していることがある場合などもあります。

プロフィール 時田大輔

歯科医師、歯学博士。 東京医科歯科大学歯学部歯学科卒業後、同大学院、歯髄生物学分野にて博士号取得。

 

まずは歯科医師を目指したきっかけ、現在の専門(歯内療法※1)へ進んだきっかけをお教えください。

 

両親が歯医者だったことから、身近な仕事だったため歯科医師を目指しました。

そして、大学4年生のころに早期研究体験実習にて選択する際に、なんとなく歯内療法(※)学を選んだことがきっかけで、研究からはまってしまいました。その後、歯科医師免許取得後、特に迷うことなく、歯内療法学(歯髄生物学分野)の大学院に進みました。

 

 

現在のフリーランスというキャリアにはどのように至りましたか?

 

大学院時代に業績を積ませていただきまして、大学に残る道もあったのですが、そのころ、「治療をして私も幸せだし患者も幸せになる」という、ごくあたりまえな「やりがい」を考えていました。

なんのために、論文を読み、大学病院にて臨床をし、学生・研修医教育また研究も行っているのか、と考えたときに、それ相応に現実的な生活における「やりがい」を考え、大学病院内をベースにして診療行うよりも、開業医にてそれまで備えてきた知識や技術を発揮したほうがより目的に適うのではないかと思うようになりました。ちょうど、法制度の問題で大学病院にて勤務する曜日が少なくなる期間があり、その際にいくつかの医院に歯内療法だけを開業医でやらせてくれ!とわがままにも知り合いつてに頼み込み、当時は勢いでしたが、だんだんそれが軌道に乗ってきて現在の生活のベースになっています。

 

 

現在はフリーランス歯科医師としてどのような仕事のスケジュールで生活していますか?

 

現在は基本的に定期的に伺う医院と不定期(スポット)で伺う医院に分かれます。定期的に伺う医院では毎週伺う医院と、週替わりの医院になります。また、その医院のなかでも、新幹線で伺うような距離の医院では一日契約、郊外ならば半日契約、近い範囲であれば時給契約にさせていただき、一日に3件の歯科医院を回ることもあります。不定期の医院は依頼が来た際に、空いている時間に承ります。

 

 

現在まで、フリーランス歯科医師としてのキャリアを継続してきて、勤務の歯科医師に比べたメリット・デメリットはどう感じていますか?

 

メリットは、まずとにかく自由です。また、たくさんの医院(環境)に触れることができます。社会に出て最初に「大人」に触れたのは大学院でしたが、いまの「大人」は各医院でお世話になっている院長先生や各スタッフです。そういう出会いから、医院のコンセプト・考え方など、おいしいとこどりができるといったところでしょうか

デメリットは、自分の身は自分で守らなければならない、というところかと思います。

 

 

フリーランスの歯内療法歯科医を呼び、活用している医院はまだ少数だと思いますが、時田先生は、医院にとってのメリット患者さんにとってのメリットをどう感じられていますか?

 

患者は、歯科医院にくるとまず、”病気見つけマシーン”となった歯科医師に、診断されます。虫歯、歯周病などを指摘されるわけですが、当然落ち込んで帰るわけです。病気見つけマシーンになるのは歯科医師が診断することが仕事ですから仕方のないことですが、ただ患者への病気の伝え方が間違っています。健康な状態をまずみつけ、ほめる。その上で病気を指摘する必要があります。というのは、大学病院の新患当番にでていると、歯が保存不可かどうか、診断する場面が日常的にあります。伝え方を間違えると患者は怒ったり泣いたり、さまざまなリアクションをとります。そういう苦い経験を踏まえたうえで私が感じている歯内療法医を雇うことによる医院・患者の双方のメリットを考えてみました

 

患者側のメリットは歯内療法という治療の価値をわかっていただけることなのではないかと思います。クラウン(※歯の被せ物のこと)が白くなるような、見た目で患者には喜んでもらえるのと同様に、根管治療では炎症が止まるあるいは、骨が戻ってくる。それは例えば6歳臼歯(※切歯から奥に向かって6番目の大臼歯のこと)であれば、根尖性歯周炎(※)が治癒し骨が回復することを、根管治療終了後に経過を患者と一緒に追ってレントゲンで見せていくことができます。患者は暗い気持ちで、ああ、ただ根の消毒ですね、口開けて大変でしたね。ではなく、6歳の時の根尖(※)の骨の状態に治し健康にしているんだよ、と価値を理解してもらい、治して価値のある治療なんだよ。と病気から健康に治っていく過程をより伝えやすくなるのではないかと思います。

 

実は、フリーランスをしていて思うのは、まず歯内療法の価値が最初に伝わらなくてはいけないのは患者ではなく医院のスタッフです。ラバーダム(※治療部位への唾液の侵入を防ぐためのゴムのシート)をして顕微鏡を用いて治療し、予後を確実にとって治っていくステージをみると、患者よりも歯科衛生士や歯科助手の方がまず先に価値をわかってくれます。すると、自然と、「クラウンは私費でやるなら根管治療はお願いします。」という流れが生まれます。そうすることで、結果的に抱えている患者の歯をより健康な状態に持っていくことができると思います。また、難症例においても依頼していただければ治療させていただきますので、歯科医師にもストレスはなくなるのではないかとも思います。これが医院側のメリットかと思います。

 

 

もし開業歯科医が、歯内療法のフリーランス歯科医師に来てもらいたかったら、月どのくらいのペースで予定を組むのが一般的でしょうか?

 

月1回だけの医院から毎週伺う医院もあります。保険と自費でも異なりますが、比較的その状況に応じてフレキシブルに組めますのでご相談いただければと思います。理想的には毎週お伺いして治療するか、月二回程度か、というところです。治療後の予後はしっかり追わせていただきたいと考えています。

 

 

時田先生のキャリアのビジョンを教えてください。

 

開業を考えています。が、現在のように各医院に伺う仕事も行いたいので、何か得意分野をお持ちの先生と、あるいは歯内療法の先生と医院をシェアしながらという考えでいます。たとえば現在開業されている医院でも休診日には機械は寝ています。例えば、普段休診日である木曜日だけでも歯内療法で使わせていただければ、とも考えます。

 

 

一般の患者さんに歯内療法の重要性を理解してもらうには、歯科医師にとってどのようなことが必要だとお考えですか?

 

先ほどの話の続きのようになりますが歯内療法の価値を患者にわかってもらうにはまず、スタッフに価値を理解していただく必要性があります。なので、歯内療法を私が行う際にはなるべく患者やスタッフに魅せるように治療します。顕微鏡がありますから治療中の動画や写真を用い、患者への説明を行う際にスタッフにも聞いてもらうなどしています。抜歯を全摘として捕らえるのであれば、部分切除である歯内治療の、難しさ。スタッフが理解することでより患者の理解度を助けることができます。スタッフが根管治療の難しさを理解し、健康な状態への回復とその価値を理解していただけるのであれば、ベクトルがそろうので「治療してわたしも患者も、そしてスタッフも幸せ」という環境を整えていくことかと思います。

 

 

フリーランス医療職(歯科医師)にとって専門を活かしたワークスタイルを確立するために必要だと考えていることを教えてください。

 

多く、大学病院で専門的な技量を積み、その後大学を辞めて一般勤務医や開業になられる先生がいらっしゃいます。私はそれはもったいないと思います。いままで研鑽を積んできたことを、ぜひご自身のライフスタイルの中でブランディングして価値をつけていってほしいと思います。

歯科医院は沢山あります。例えば歯内療法であれば、その医院でもお困りの歯内療法の症例があります。そこに需要がまずあります。たとえばその歯科医院で保存の可否判定、あるいは治癒して保存が可能となれば、苦労されていた歯科医師やスタッフ、また患者も、歯内治療の価値を理解していただいた上でまるっと解決することができます。特に開業している医院が多い地区ほど需要が増えると考えますので、歯科医院の競争はむしろ逆手に考えられます。

様々な環境の医院の中で、私はまずは「スタッフが楽しく働けるか」を第一に考えます

理由は、先ほど述べたように、歯内治療をわかっていただくためにまず価値を伝えるべき相手であるとともに、最終的なゴールは、「治療して歯科医師もスタッフも、患者も幸せ」になるための入り口です。そのためにはさまざな環境下で、さまざまなスタッフと柔軟に仕事ができるか、そしてその中でスタッフに歯内治療の価値を伝えられるか、が勝負です。患者はそのあとについてきます。

 

最後に、このように言葉にする機会をいただいてお礼を申し上げます。

 

時田先生、インタビューへのご協力どうもありがとうございました。

歯内療法の重要性が、今後、より一層一般の方に知っていただければと思います。

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