「現場感覚」を大切に。看護師兼ライターの視点 ―白石弓夏さんインタビュー

「現場感覚」を大切に。看護師兼ライターの視点 ―白石弓夏さんインタビュー

2020.10.26 09:00




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 看護師であり、フリーランスのライター。主にTwitterやnote、ブログなどを通じて、看護師・看護学生の悩みに向き合う白石弓夏さん。今年11月、様々なカタチで活躍する看護師の本音に迫る初の著書「Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~」(メディカ出版)の発売が決まり、ますます活動の幅を広げています。白石さんに書籍のことや看護師のキャリアについて熱く語っていただきました。

 

 

白石弓夏

看護師兼ライター。約10年、主に小児科と整形外科病棟で経験を積み、現在は整形外科病棟と小児科クリニックでパートをしながら、ライターとして活動して4年目。看護師の働き方・キャリアに興味あり、自身の悩みも尽きない。初の著書「Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~」は11月16日よりメディカ出版から刊行予定。Twitter (@yumika_shi )

 

 

 

――本日はよろしくお願いします。まず白石さんご本人のことについて伺いますが、看護師になったキッカケやこれまで経験した科などを教えて下さい。

 

白石さん きっかけはいくつかあります。小さいときに1ヶ月くらい入院し、男性の看護師さんと遊んだ記憶があったこと。高校生で野球部のマネージャーをし、裏方としてサポートすることにやりがいを感じたこと。部活の顧問や母親から看護師を勧められたこと。大好きな祖父が入院したこと――などがありました。もともと人と関わる仕事がしたいと思っていたので特に悩むことはなく、看護師ならそれらが全てできると思ったんです。

 看護師になってからの約10年は、小児科や整形外科病棟に長くいました。色々とやりたいことがあり、5回転職をして、その合間に病院以外のクリニックや施設、ツアーナース、健診など派遣の仕事をしていた時期もあります。

 

 

――ライターの仕事はどのようなキッカケで始めましたか? 

 

白石さん なんとなく、「自分にはどんな働き方が合うんだろう」ともやもやとしていた看護師9年目の頃。持病の腰痛が悪化したことをきっかけに一時休職。家にこもっているのが耐えられず、タウンページを見てライターの仕事を見つけました。

 特別文章を書くのが好きということはありませんでしたが、昔からSNSに日記を書いていたことや、仕事で看護サマリーや記録が読みやすいと言われていたことなどが、少し後押ししてくれたと思います。

 当時は将来の不安にかられ、週1日の仕事で身体を慣らしながら自分に合う職場を探していました。ライターの仕事も少しずつ軌道に乗りはじめたところで徐々に仕事を増やし、週2〜3日は看護師の仕事、それ以外はライターの仕事をする今のスタイルに落ち着きました。

 

 

――看護師とライターは分野が異なるので難しいのでは、と想像してしまいます。ライター業は具体的にどのように始めましたか? 

 

白石さん  ライター業は最初、看護や医療系ではなく、グルメや観光、漫画やアニメなどの趣味の延長からはじめました。自分が好きなものを熱く語ってお金がもらえるってすごいことだなと、副業感覚のほうが大きかったです。それに加え、クラウドソーシングサイト「ランサーズ」でも活動をはじめました。

 記事がランキングの上位に入ったり、PV数が増えたりしていい反応をいただけるようになったのですが、いかんせん収入面ではお小遣い程度でした。そこで看護や医療ジャンルでもう少ししっかりと仕事をしようと決めました。

 昔から好きで見ていた看護系のWebサイトに「私はこういう記事が書けます」と直接問い合わせをして、「試しに書いてみますか」と言われたのがはじまりです。そこでライターのノウハウを教えてもらったと言っても過言ではありません。いまでもお付き合いがあるメディアです。

 

 

――では、今運用されているSNSやブログはどのように学びましたか?

 

白石さん SNSやブログをはじめたのは、ライターとして活動しはじめてから半年~1年ほどしてからです。文章を書く練習をしたいと思い、スタートしました。書いたものがどのような反応をもらえるのか、読者はどんなことを知りたいのか、またWebサイトの裏側についても多少は知っていた方がオールマイティに活動できると思い、独学しました。

 特にブログやSEO、ブランディングなどのノウハウはネットにたくさんあるので、自分のレベルと合うものを見つけて参考にしていました。それまではWordとExcelがほんの最低限使えるレベルです。

 

 

――駆け出しの頃は「記事が読まれない」「書く時間がない」「面白いネタが思いつかない」などの悩みにぶつかりやすいと思いますが、どうでしたか? 

 

白石さん そういった悩みはあまりなかったと思います。それよりも、記事に対して読者から指摘が入り、自分の未熟さ、知識や経験が足りないと壁にぶつかったことはありました。しかし、周りが私を見捨てず、向き合ってくださり、私もそれにしっかり応えようとコツコツやっていくなかで、乗り越えてきたように感じます。

 しかしライター2年目の頃、仕事がもらえるようになり、どんどんひとりで抱え込んでいた時期がありました。スケジュール管理も今ほどうまくできなくて、夜中に執筆していたこともあり、かなりハードワークだったと思います。だけど当時は、看護師の仕事の方がずっと大変だったので、そこと比べるとライターの仕事はしんどくないというのが、正直なところです。私はタフな方だと思いますが(笑)、「悩んでもとにかく進む」という意識でやってきました。スケジュール管理も自分に合うやり方をあれこれ試してみて、ようやく効率よくできるようになったおかげで、心の余裕が生まれました。

 

 

――実は取材のやりとりを通じてスケジュール管理がとてもしっかりされている印象をうけました。看護師とライターを両立するために心がけていることを教えて下さい。

 

白石さん  私は常勤ではないので、どちらも仕事でもコミュニケーションはかなり意識しています。毎日顔を合わせていたら阿吽の呼吸のような、言わなくても伝わることって多いと思いますが、週に数日しか来ない、ましてやテキストベースのやりとりメインだと言わないとなにも伝わらない、しつこいくらいがちょうどいいと思いながら、基本的なホウレンソウなどはこまめに伝えるようにしています。誤解が生じたり、ミスが起こったりすると、最悪の場合フリーランスは契約解除になることもあるので…。

 スケジュール管理はかなり厳密にやっていると思います。元々、夏休みの宿題は31日になって取り掛かるタイプでしたが、最近は締め切りから逆算してスケジュールを立てるのではなく、今この時点から最短でいつできるかを考えて余裕を持ってできるようになりました。

 特にライターの仕事は、集中力が切れてズルズルとしてしまうこともあるので、午前中の頭が冴えているときに仕事の7〜8割を終わらす気持ちでやり、午後は集中力がなくてもできる仕事(メールのやりとりや打ち合わせ、企画案を考えるなど)を持ってくるなど調整するようにしています。仕事の効率がめちゃくちゃあがり、締め切りに追われるという感覚がなくなりました。

 

 

――ライター業の手応えを感じ始めたのはいつ頃からですか? 専業ライターになることは考えましたか?

 

白石さん 手応えと言えるほどではありませんが、約1年で長期的な案件も増え、「ライターとして食べていけるかも」「専業ライターもありかも」と思った時期はありました。しかし、「看護師を続けているからこその視点がとても大事」と担当の編集者さんに言われたことや、私自身も現場を離れたくないという気持ちもあって、結局その考えはなくなりました。今後も専業になる予定はないと思います。

 

 

――続いて看護師とライターの兼業について伺います。兼業することで、看護の現場の肌感を記事にアウトプットできるなどのメリットもあるのではと思うのですが、実際いかがですか? 他にも変化はありますか?

 

白石さん 私は患者さんとゆっくりじっくり関わるというより、短い時間でテキパキとできることをやるようなタイプだと思います。正直、患者さんとしっかり向き合うことが苦手でした。

 だけど、ライターとして相手の話に耳を傾け、言葉を引き出す、すくい上げるようなことをするようになって、苦手な部分と向き合わなくてはならないと思いました。取材をはじめたばかりは憂鬱なこともあって、今でも苦手意識は少しあるのですが、段々と回数をこなすようになり、自然と肩の力が抜けてきた感覚です。

 そのためか、最近ちょっと難しいケースの患者さんを受け持つ場面があったのですが、昔に比べて臆することが減ったように感じます。看護師の経験がライターに生きることはあると思っていましたが、まさかライターの経験が看護にも生きるとは思っていなかったので、これには驚きました。もちろんアウトプットできて勉強になるのもメリットだと思います。

 

 

――ところで、同僚の看護師さんは、白石さんのライターとしての活動を知っていますか?

 

白石さん  職場の人は知っています。自分から積極的には言っていませんでしたが、たまたま同僚が調べ物をしていたときにわかりやすい記事があり、私の名前があることに気づいたと教えてくれました。同僚は自分よりも年上の人が多いので、普段記事を書いている若いユーザー層とは少し違いますが、たまに「この前の〇〇の記事見たよー」などと声をかけてもらうこともあります。 

 

 

 ――記事作りのために、白石さんが日常的に行っていることはありますか? これまでに培った工夫やこだわりをぜひ教えて下さい!

 

白石さん 大事にしていることの1つに「現場感覚」があり、そのために看護師を平行して続けているのだと思います。日常的にはSNSで情報を得ることもあります。興味のある人だけではなく、あえて正反対であろうタイプや、他職種・別分野の方も意識してチェックしています。ときには、批判的な反応をもらうこともありますが、そうした声も目を背けずに見るようにしています。

 ネタ探しは日頃もやもやしたことや、知り合いと話をするなかでピンときたものをスマホのメモ機能に書き込み、それを元に企画構成を考えることも多いです。

 看護師や医療職同士ではオフ会や勉強会などを開いて、実際に会って話をすることもとても大事にしています。SNS上の文章だけではわからないことも多いので、こうした関わりは今後も続けていきたいです。

 

――いよいよ書籍について伺います。この度は初の出版、おめでとうございます!出版まではどういった経緯で辿りついたのでしょうか。

 

白石さん ライター3年目の頃、看護師の働き方が色々あるにも関わらず、病院で働くことしか知らない人がいるとか、働き方に悩んでいる人がいることを実感し、そうした人をサポートできるものを書きたいと漠然と思っていました。本にしたかったのは、隙間時間でスラスラ読むものではなく、読者がじっくりキャリアと向き合う時間が取れたらと考えたためです。

 企画書を書いてみたものの、ライターとしてはまだまだ看護師の下駄を履かせてもらっているという自覚があり、半年くらいは寝かせていました。いつもは即行動タイプなんですがタイミングを見計らっていました。

 企画書を出したのは、雑誌の連載などを持つようになり、ワンステップ成長したと思ったからです。たまたまTwitterでもやりとりをしたことがあった書籍の担当さんが対応してくださり、ちょうど似た企画を考えていたと言われ、何度か打ち合わせをしました。看護観…まで堅苦しいものではないけど、いろんなところで活躍する看護師がどのように仕事と自分と向き合っているのか話を聞いて、本にするということでスタートしました。

 

 

――普段から文章はよく書かれていると思いますが、Webの記事執筆と比べて今回の書籍出版はいかがでしたか?

 

白石さん 実際、ウェブメディアでは多くとも3000〜5000文字くらいの執筆ですが、書籍の場合ひとりの取材に対して初稿では8000〜10000文字ほど書きました。文字起こしでは12000〜16000文字くらいだと思います。

 スケールが全然違うこともあって、構成などが心配でした。段々と回数を重ねるごとに取材の仕方や文字起こし、編集が上手くなっていったような気がします。軽い千本ノックみたいな形で、初稿を書き終えたあとは、とても達成感がありました。

 

 

――そんな書籍の見どころ、こんな方に是非手にとっていただきたい!という点を教えて下さい。

 

白石さん 今回、9人の看護師+私の計10人が登場します。バックグランドがバラバラで、看護師になった理由も、その後の働き方も、仕事や自分との向き合い方も違います。現在活躍している人をみると、すごいな…という一言しか出てこないこともありますが、その裏ではさまざまな葛藤や苦難を乗り越えてきた経緯があり、それらは表立って知る機会は多くはありません。

 書籍では、そうした経緯についても話をしているので、「私もこういうことがあった」とか、「いままさに同じようなことで悩んでいる」ということがあるのではないかと思います。いろんな人の話のなかには共通する話も出てきますし、普通に働いているとなかなか知り得ない世界が垣間見えます。

 私自身、取材を通してエネルギーをもらいました。なかでも世界中を飛び回る看護師でもあり疫学者でもある方の「看護師免許は自由へのパスポートだ」という言葉がとても印象に残っています。いつもは「看護師としてどうするべきか」などと考えてしまいがちで、どこか息苦しさを感じていたのですが、人生なにをしたいか実現させるために看護師免許をツールとして使うという考えを知り、気持ちが楽になりました。

 この書籍では、私と同じようにこれから看護師として頑張る人が少しでも前向きになれるように、背中を支えることができたらと思います。

 

 

――白石さんが今後、看護師として携わりたい領域、ライターとして目指していることなど、将来のビジョンについて教えてください。

 

白石さん 日頃から大きな目標みたいなものはなく、目の前のことをコツコツとやっていくだけ、と考えています。看護師としては小児の領域にもう少し関わりたいと思っています。新卒で小児科にいたからか、自分の原点みたいに感じるので、子どもと関わる仕事がしたいです。

 また、ライターとしては看護師の下駄を履かなくても仕事をいただけるようになりたいです。美しい日本語、心を揺さぶるような文章が書けるようなタイプではないかもしれませんが、自分らしく素直な気持ちで、わかりやすく、文章を届けるお手伝いができたらと思います。

 

 

――最後に医療職の方に向けて一言お願い致します!

 

白石さん 医療者のなかでも副業や+αに挑戦している人を周りでも見かけるようになりました。しかし、さまざまな働き方をしていると華やかだったり、インパクトが強くかっこいいと感じたり、そこに注目されがちかもしれません。

 私自身も意識していることですが、まずは本業や土台を疎かにせずにチャレンジすることをしてほしいと思います。また、+αが本業にとっても相乗効果が出るように、うまく組み合わせていけるといいですよね。ライターの仕事は、自分との戦いでときに自分の身を削るようでつらく感じるタイミングがあると思いますが、それでも自分のペースで続けていくことが本当に大事だと思います。

 

 

――この度はありがとうございました!白石さんの今後のご活躍を期待しています。

 

 

白石弓夏さん 著書 「Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~」

 

 

白石弓夏さん 著書 「Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~」

書籍詳細は、メディカ出版ホームページをご確認下さい。(予約・購入が可能です。)

 

 

 

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