#49 ソーシャルワーカーから、社会人入学で言語聴覚士へ。
2020.06.15 09:00
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医療職の方のキャリアや人生に対しての視野を広げるDspace Plusの「のぞき見みんなのキャリア」では、様々な医療職の方をインタビューします。
49回目は、言語聴覚士のちびねこさんです。ちびねこさんは、出産後職場復帰した経験があります。
キャリアや医療業界に関してのお考えについて教えていただきました。ぜひご一読ください。
ちびねこ
言語聴覚士。地方公立大学にて社会福祉士・精神保健福祉士を取得。精神科病院でソーシャルワーカーとして勤務。その後退職し専門学校に社会人入学、言語聴覚士を取得。内科・精神科病院に勤務。30代前半で結婚、翌年第一子を出産し1年後に職場復帰。現在は家族の都合で退職し専業主婦。
趣味は読書、ヨガ、温泉めぐり。
ーまずはちびねこさんが言語聴覚士を目指したきっかけをお教えください。
以前精神科ソーシャルワーカー(以下PSW)として退院支援をしていた時に、脳梗塞の後遺症で失語症の患者様に出会いました。意思はあるのにコミュニケーションがうまく取れない様子に疑問を感じて調べるうちに、言葉の障がいやリハビリテーションについて興味を持ったのがきっかけです。
ーちびねこさんは、現在は、どのようにお仕事されていますか?
現在は家庭の事情で退職し、専業主婦をしています。
言語聴覚士(以下ST)として働いていた時に結婚し、出産1年後に時短勤務で復帰しました。職場に院内保育所があったので、仕事のとき以外はずっと子どもと一緒の生活でした。
言語聴覚士の資格取得に、専門学校を選んだ理由は、大学卒業が入学の条件だったこと、隣県だったこと、期間が2年だったことなどです。在学中のカリキュラムはかなりハードでしたが、経済的にも年齢的にも2年間というのは魅力的でした。1年目の3月に東日本大震災があり(学校が被災県)イレギュラーづくめでしたが、何とか無事卒業して資格を取得することができました。
ーキャリアの選択を悩んだことはありましたか?現在のキャリアに進むに当たって、どう決断しましたか?
STとして就職する前はPSWの経歴があるということがマイナスになるのではないかと悩みました。
医療の現場は専門職の集まりで職域がはっきりしています。他分野の職歴のある人間を「仲間」として受け入れてくれるのだろうか…という不安は常にありました。特に私の前職は「医療の中の福祉」という立場でもあったので、雇用する側にも抵抗はあるのではないかなと…。
偶然、精神科もある内科慢性期の病院でSTの求人があり、覚悟して採用試験を受けました。元々精神科の仕事が好きだったので前向きにアピールした結果、採用してもらえることになりました。自分の経歴を否定されなかったことが嬉しかったです。
今は家庭の都合で退職しましたが、仕事に未練もあります。退職前は、職場が許容してくれた部分もあって、診療報酬上は算定外になる精神科(精神疾患や認知症の方が対象)の仕事も行うことができました。STが精神科の患者様のリハビリを行うというのは全国的にも例が少なく常に試行錯誤でしたが、とてもやりがいのある、今後も確実に必要になる分野だと思っています。どのような形になるかはわかりませんが、この経験を誰かのために使いたいなと今は考えているところです。
ー今後は、どのようにお仕事をしていこうと考えていらっしゃいますか?
専業主婦になってみてつくづく思うのは、やはり人と向き合う仕事が好きだということです。ただしフルタイムの勤務は自分にも家族にも負担が大きく、特にこれから成長する子どもと遠方に住む両親のことを考えるとなかなか踏み切れません。
理想はパートタイムでSTとして働きながら、自分のやってきたことを少しずつ伝えていけたらなと思っています。興味があるのは認知症や精神疾患のある人のリハビリと、発達障害などの療育の分野で、生活の中で状態を維持するためのリハビリをやっていきたいです。国の医療もどんどん変わるので今後これがリハビリとしての仕事になるのか福祉分野の仕事になるのかわからないのですが、私としてはどちらでもいいと思っています。診療報酬上STが必要なのであればその資格を、制度上PSWや社会福祉士が必要ならそちらを、といった具合にやって、世の中が私を便利に使ってくれればいいかなというのが私の考えです。
ー育休後、時短勤務をしていた時のエピソードや感じていたことをお教えください。
職場復帰直後は子どもも体調を崩しやすく、急な休みを頂く事も頻繁にありました。育児に理解のある上司に恵まれたこともありスムーズに仕事をしていましたが、徐々に責任がある仕事も増え、チームの中でSTのトップを任されるようになりました。ちょうど同じ頃から摂食嚥下の仕事が激増するようになります。子どもは不定期に体調を崩すのですが休みたくないのも本音、苦肉の策が「昼食時に合わせて出勤する」スタイルでした。
摂食嚥下訓練は患者様にお食事が提供される昼食時がメインです。そのため、朝は2~3時間有給を使って昼に合わせて出勤、子どもを保育室に預けて仕事へ。子どもが落ち着いていればそのまま終業時まで仕事をします。当時の上司が認めてくれたことも大きかったと思います。
優先される業務は所属機関で異なるとは思いますが、その組織で一番求められているものを理解していれば、働く側も柔軟な時間の使い方ができるのではないかなと感じています。
ー理解のある職場での仕事復帰だったのですね。当時は、お仕事の日はどのようなスケジュールで生活していましたか?
言語聴覚士 ちびねこさんの1日タイムスケジュール
-
-
AM 6:00
起床
子どもの弁当作り、朝食、
子供を起こして準備
-
AM8:00
出勤
子どもと一緒に出勤、保育室に預ける
-
AM9:00
時短勤務
8:45~16:30の時短勤務
-
PM17:00
退勤、帰宅
家事、子どもと入浴
-
PM18:00~19:00
食事
19:00頃夫帰宅
-
PM21:00
子ども寝かしつけ
家事
-
PM23:00
就寝
-
ー現在キャリアを継続する上で、大変なことと、それに対して工夫している点は?
やはり子どもの急な病気と仕事のやりくりです。
夫は仕事で数日間家を空ける日もあり、お互いの実家も遠方だったため、基本的には私が子どもを見ている状態でした。
患者様の状態によってはすぐに対応しなくてはならないこともあるので、チーム内のSTとの情報共有は特に力を入れて行っていました。他職種(特に病棟スタッフ)とも日頃から細かいことも相談しあって、小さな情報でもお互い言いやすい雰囲気を作るように努めました。
急性期・回復期の現場だともっとシステムとして確立しているのかもしれませんが、慢性期・精神科は患者様の入退院も少ないので長期間様子を見ている病棟スタッフのフォローは必要不可欠で、結果として自分の仕事を円滑に進めるために有効でした。
ープライベートと仕事の両立を実現するため今の医療業界に必要なものは何でしょうか?
雇用形態のパターンをたくさん提示する事ではないでしょうか。
今の時代、育児・介護などで生活が変わっていくことは誰しも他人事ではないと思います。仕事との両立が難しい場合、現状では「退職」「転職」が第一選択であるように思います。しかし育児も介護も数年で状態が変わります。その時まで同じ職場でパートや変則的な勤務形態でも仕事を続けられていれば、その後ブランクなく正職員に戻れると思います。
ー今後の医療業界の動きに期待することをお教えください。
働き手の家庭は、少子高齢化社会の縮図だと思います。自分の両親祖父母の生活を支えながら子供を育て、その上で医療スタッフとして働く人間が大半です。今まで以上に柔軟性のある働き方を示していただければ離職を繰り返す人が減るのではないかと思います。
ー最後に、このインタビューを読んでいる医療職の方に一言お願いいたします。
私の場合はたまたま2つの職種を経験していますが、そうでなくても「隠れたニーズ」を探すことはできると思います。
例えば私が取り組んだものに「精神障害のある人の嚥下訓練」があります。経験してみると非常に独特で他職種の協力が必要不可欠、ただし訓練を行うことで一定の改善が得られる分野でした。(僭越ながら病院機能評価でお褒めの言葉を頂くことができました。)
いろいろ縛りが厳しくなっている医療業界ですが、患者様が求めることに応えていけるという自負は、どんな小さなことでも医療職にとって心の糧になると思います。
どうか皆さんが1つでも多くの糧を得て、長く良いキャリアを続けていかれますように。私自身も精進したいと思います。
ーちびねこさん、今回は貴重なご経験をお話いただき誠にありがとうございました。
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