研究留学の魅力、アメリカ留学中の歯科医師のリアルな声

2019.10.29 10:30

Dspace Plusでは、違う医療の職種のキャリアを知ったり、近いキャリアの方の経験談をみることで、『キャリア』ひいては『人生』に対しての視野を広げられることを目的に、様々な医療職の方にインタビューをしていきます。

 

今回は、臨床研修後、大学院で歯周病学を専攻した後に、アメリカでの研究留学の道へ進んでいる歯科医師 永田瑞先生に、臨床の道を一旦離れて研究に進んだ経緯や、留学準備、アメリカでの研究留学のリアルな様子についてお伺いしました。

写真:永田先生提供
プロフィール 永田 瑞(ながた みずき)
歯科医師、歯学博士。2012年東京医科歯科大学卒業、2017年同大学院博士課程修了後、歯周病学分野医員を経て、2018年よりミシガン大学歯学部にて研究留学中。現在一児の父。

 

 

まずは、永田先生が歯科医師を目指したきっかけをお教えください。

 

歯科医師である両親の影響が大きいです。小さい頃から身近に感じることのできる職業であり自然と意識するようになっていましたが、特に、開業医である両親自身が楽しそうに生きがいを感じて歯科医療に打ち込んでいる姿を見て、きっとやりがいのある職業なんだろうな、と思えたのがきっかけです。

 

 

歯科医師の臨床研修後に歯周病学分野の大学院に進学した永田先生ですが、歯周病学分野の大学院に進んだ理由をお教えください。

 

まずはじめに、歯科大学を卒業後のキャリアとして色々な選択肢があると思いますが、一般的には一年間の臨床研修制度を経て、専門分野の大学院に進むか、開業医に勤めるか、という大きな分かれ道があると思います。私の場合、開業医である父が、臨床のかたわら学会等で自身の臨床研究の成果を積極的に発表している姿をみていたので、自分も将来臨床をやりながら研究が行えるような力をつけたいと思い、大学院に進むことを決めていました。大学院の進路は専門分野で細分化されており、正直なところ入局試験直前まで悩んだことを今でも覚えています。

最後の決め手としては、実際に大学院に入ってどういう研究をしたいかと考え直した際、歯学部生の頃に、現在歯周病で失われた歯茎や骨を再生医療で治せることを知り、とても魅力を感じていたため、素人ながら漠然と再生医療に関して研究したいと思い、歯周病学分野に進学することを決めました

 

写真:永田先生提供

 

大学院卒業後の現在はアメリカに研究留学をされていますが、留学を決断した理由は何ですか?

 

留学に関しては、父のすすめや、留学経験を持つ著名な先生が歯科分野で活躍されているのを見て憧れを持つようになり、いつか自分もチャレンジしてみたいと歯学部生の頃から漠然と思っていました。卒後臨床研修でお世話になった恩師が海外でも講演等を行いグローバルに活躍される先生であったことも強い動機になりました。

現在、基礎研究といって臨床に直接つながるかはまだ分からない分野で研究留学をしていますが、正直、大学院に入るまでは、臨床を前提とした留学に関して考えていました。

しかし、実際に大学院に進学すると、ご指導いただいた基礎研究の教室で幸運にも新たな恩師と出会うことができ、研究の奥深さや魅力を感じることができました。特に、常に真摯に科学や医療と向き合い、一見当たり前のようなことでも常に疑問を持つ姿勢は、普段教科書や論文の知識、先輩からの教えを習得するので精一杯だった自分にとっては大変ショックで、とてつもなく大きな憧れになりました

そんな大学院生活も終盤に差し掛かった頃、日本でお世話になっていた大学の先輩が留学しているミシガン大学の研究室へ見学できることになりました。そこで実際の留学生活や、ハイインパクトな論文を出すための環境などを知り、基礎研究でさらにチャレンジしてみたいと研究留学を決意する動機になりました。その後ご縁があり、その時見学した研究室に現在留学することができています。

 

 

今後、留学予定の方のために、留学に当たっての準備と期間を教えてください。

 

準備期間のおおよその目安としては、希望の研究室から内定をもらい実際に留学するまで半年〜1年くらいかかると思います。私も大学院で学位を取得後、留学希望先の研究室と連絡を取り、内定をいただいてから約1年後に渡米いたしました。準備期間には、留学予定先の大学とVISA取得等のための書類のやりとりや、日本で所属していた医局での仕事の引継ぎを行いました。

これから留学を目指す先生は、周りの留学経験のある先生の話を聞いたり、実際に海外の学会に参加したり研究室を見学することで、より具体的に何を準備すべきか意識できるだけでなく、思わぬ繋がりができることもありますので、積極的に行動することをお薦めいたします

 

また、留学に関しての大きな心配事として、お金と語学のことがあると思います。研究留学中の給料に関しては、一般的に、

 

①留学先から給料をだしてもらう

②日本の勤務先から給料をもらいながら留学する

③日本から留学助成金をもらう

④どこからももらわず自費で留学する

 

と様々です。私の場合は、現在留学先からの給料(①)と、一部日本の所属学会からの留学助成金(③)をいただいています。②、③、④のように自分でお金を確保できれば留学先の選択肢は増えることは確かですが、奨学金に応募する際なども、やはり申請書の準備や選考期間など時間がかかるプロセスになりますので、早めに情報収集を始めるのがよいと思います

語学に関しては、私自身準備不足な面も多くありました。留学を意識した歯学部5年生くらいから留学のための英語学習を少しずつ始めたのですが、やはり日本にいると必要性を感じる機会が少なく、モチベーションの維持に苦労しました。当時は、ボランティアで英語の授業を行ってくれていた大学の先生の授業に参加したり、海外の大学院試験に必須であるTOEFLの対策に関する本や授業で学習していましたが、それ以外の自学自習の時間はあまりなかったと思います。研究留学の場合、試験何点以上必須、といった明確な基準はないのですが、総合的な英語力をあげる意味でもTOEFLの勉強は非常に役に立つと思います。当たり前ですが、英語学習はすぐに上達するものでもなく、コツコツとやっていくことで成果が出てくるのを現在は痛感しておりますので、日本にいるうちから習慣づけて英語学習に取り組めるような工夫が必要だったな、と思います

現在は、英語学習に関して、インターネットでも質の高い動画や教材が入手できますので、すきま時間なども活用して、毎日習慣づけて楽しく学習しています。

写真:永田先生提供

 

アメリカでの研究留学中の現在は、どのようなスケジュールで生活していますか?

 

研究留学中の1日のスケジュール(例)

7:30 起床、朝食

8:30  通勤

9:00-18:30 研究室にて実験、ディスカッション

(週に1,2回、セミナーやミーティングに出席)

19:00 帰宅、夕食

21:00-23:30 デスクワーク

(論文執筆、学会発表準備、英語学習など)

24:00 就寝

 

もちろん、一般的な会社と違って、自己責任でフレキシブルにスケジュールを立てられるので、日によって様々です。

写真:永田先生提供

 

研究留学の経験は今後どのようなことに活かせそうだと感じていますか?

 

研究留学は、人生の中で特に研究に没頭できる時間で、惜しみなくチャレンジする機会に恵まれた環境であると感じています。具体的に役立つことはまだ予想できませんが、試行錯誤しながらやりぬく忍耐力、そしてその後に待っている達成感(論文発表など)は、きっとこれからの歯科医師人生の大きな糧になると願っています。

また仕事以外でも、異国の地で長期間過ごすという経験は、やはり自分や家族にとって様々な視点を学べる貴重な機会だと感じています。一旦日本から離れることによって、客観的に日本の良い点、問題点などについて考える機会も増えました。また、実際に英語圏の文化を肌で感じ、そういった文化を含めて英語を学ぶことは、表面的な語学力向上以上の価値があると感じています。日本に帰国後はきっと今まで以上に海外を身近に感じ、人生の視野や選択肢が増えるだろうと思います。

写真:永田先生提供

 

今後のキャリアはどのように考えていますか?

 

今現在としては、日本に帰国して、やりがいのある研究が続けられるような道、例えば大学や企業の研究部門、を考えています。大学に所属した場合、基礎の講座で研究をとことんやる、または臨床の講座で患者さんを診療しながら並行して研究を続ける、といった道があると思います。どちらが自分にあっているかは、正直なところまだ私も模索している段階で、今は色んな選択肢の幅を広げたいと思っています。

 

研究と臨床の両立を実現するため、今の医療業界に必要なものは何でしょうか?

 

研究マインドを持った先生が、大学でも開業医でもさらに増えることが重要なことの一つだと思います。ここでの研究マインドとは、今現在の知識や治療法を批判的に吟味するだけでなく、実際に自分で検証して論文等であらたなデータを世界に発信する、ことを意味しています。そもそもなぜ研究と臨床を両立させなければならないのかの理由を考えると、現在完全な医療というのは存在せず、新しい治療法を常に開発する必要があるからだと思います。日本でも近年、EBM(Evidence-Based Medicine)といったエビデンス(科学的根拠)に基づいた治療が普及してきましたが、まだまだ「有益である」治療法というのは割合としては少なく、「経験」に頼らざるを得ない場面も多いです。理想的には、大学・開業医がそれぞれの得意分野を合わせて垣根なく協力し、日本の臨床現場から多くのエビデンスが発信できるようになれば、開業医・大学・患者すべてに利益のある、より良い医療業界が待っていると思います

 

さらに長期的な目線でいうと、やはり「基礎研究」の質の向上も重要だと思います。近年、日本では現場で役に立つであろう「応用研究」というのが重視されてきましたが、その反動で基礎研究力の低下が問題になってきています。最近では、国家戦略としても基礎研究力の回復・強化に舵を切り直しており、歯科分野も同様に流れを変えなければいけないと感じております。ただこれは、大学のシステムや、研究者の雇用等、様々な問題を乗り越えていかなければならず、社会全体で考えてサポートしていく必要があると思います。

 

歯科の分野は、技術職な一面も強く、大学卒業直後は、早く一人前にならなければ、と治療技術の研鑽に励み、どうしても臨床の比率が大きくなると思います。私もその一人で、実際に目の前の困っている患者さんの役に立てたときは大変嬉しく、歯科医師冥利につきます。しかし現在、臨床を離れて研究の世界を知ってみると、世界中の知らない人に論文を通して研究の成果を発信できることも、言葉にできない達成感や喜びがあり、とてもやりがいを感じます。このインタビューを読んで、少しでも研究留学に興味を持ってくれる先生が増えていただけたら嬉しいです。

 

最後に、これから留学に踏み出したい皆さまにひとことなどをお願いします!

 

これからの時代、歯科医師のキャリアも多種多様になってくると思います。私自身、現在新たな分野にチャレンジしている真最中です。少しでも留学や新しいことにチャレンジしたいと思った先生は、どんどん自分の可能性を広げていって、一緒に頑張っていきましょう!

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