アメリカ・韓国・日本3ヶ国の国家資格免許をもつ女性歯科医師が、海外から見えたもの 

アメリカ・韓国・日本3ヶ国の国家資格免許をもつ女性歯科医師が、海外から見えたもの 

2019.08.30 15:44




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医療の専門の仕事を選択している私たちには、専門の選択、職場の選択、結婚の選択、キャリアの途中で、様々な選択肢に悩むことがあります。

 

今回は、グローバルな選択肢がある場合。

 

今回経験を話してくれるのは、アメリカ、韓国、日本3つの国の歯科医師国家資格を取得後、グローバルなキャリアをもつ歯科医師の女性歯科医師Maverickarさん。

国境を超えたキャリア形成を考えている方はぜひご一読を。

 

 

プロフィール

Maverickar さん
「今までの人生の岐路では、その時その時の波に身を任せてみることを実践して現在に至る。」と話す、日米韓3ヶ国の免許を持つ、30代トリリンガル歯科医師。

北海道大学歯学部卒・UCSF International Dentist Program。

東京医科歯科大学卒後研修、東京都内で勤務医6ヶ月。

渡米し、UCSF IDP終了後、現在シアトルで勤務医10ヶ月目。

「父親が歯科医師で、元々は医者を目指していましたが受験に失敗、2年間の農学部生活を経て改めて歯学部に入ることになりました。今となっては歯科医師の仕事のを選んで本当によかったと思っているくらい歯科の仕事が好きです。」と語るMaverickarさん。

他の学部から歯科医師の道へ進んだ彼女が3カ国ものライセンスを取得したのはなぜか、海外での歯科医師生活で感じたことを今回教えてもらった。

 

 

3カ国のライセンスを取得するに至った経緯

Maverickar さんは日本、韓国、アメリカと3ヶ国の歯科医師免許を取得してします。一般的に、1つでも海外のライセンスを取るのはかなり大変です。どのようなモチベーションで取り組んだのでしょうか?

 

在日コリアン3世という背景・長年の韓国生活経験・親の希望と言った理由から卒後研修の段階から韓国の歯科医師免許の取得を志ました。研修終了後本格的に勉強を始めたところ、韓国系アメリカ人の現在の夫と知り合い結婚を機に渡米。夫の生活基盤がアメリカだったため、今度はアメリカの歯科医師免許取得が必要となってきました。

必要に応じて各国の免許を取ろうと思っただけで、正直ものすごいモチベーションから始めたものではありませんでした。

 

 

海外での国家資格取得

ー海外の歯科医師免許をとるにあたって、それぞれの制度や、おすすめの勉強方法など、海外でのライセンス取得を検討する方に向けて教えてください。

 

韓国の歯科医師国家資格を取得するには

韓国では、外国大学出身歯科医師は歯科医師国家試験受験資格を得るための予備試験に合格する必要があり、韓国語能力試験6級というのも受験資格にあります。

予備試験は1次筆記試験と2次実技試験と構成されてます。

来年度の2020年度からは本国家試験にも実技試験が加わるそうです。

日本のように「国家試験問題」が公開されていないため、「歯科大学生連合」というところから内輪で試験資料が回っているのが現状でした。そのため役に立つ資料をいかに手に入れるかが大変でした。

韓国では歯科専門用語を「漢字の言葉」+「英語」で教えていることが多いようで、まずそれに慣れるにも時間がかかりました。まだ日本の国家試験を受けてから時間がそれほど経っていなかったため、内容自体は親しく思えたのが幸いでした。

 

アメリカ歯科医師国家資格を取得するには

 

アメリカでの歯科免許は州によって管理されているので、最終的にどの州に落ち着きたいのかによって歯科医師免許取得方法は異なります。

教育機関のみで臨床を希望する場合は臨時免許の場合が多く比較的取得が簡単です。また専門医プログラム終了した場合、限られた一部の州で免許取得が可能で専門医として働けます。

私の場合は最も多い選択肢を持つことができるInternational Dentist Program(IDP・歯科大学院3年次編入)を狙うことにしました。このプログラムは2年間一般の歯科大学院の学生と一緒に臨床を中心に学び、終了時にアメリカ大学のDDS学位が与えられるのでほとんどのRegional Board(州の実技試験)を受ける資格を得ることができます。

 

最も一般的な歯科医師免許の取得の要件としては

1)アメリカ大学のDDS学位:IDP終了で授与される

2)NBDE Part1&Part2 合格:筆記試験、コンピューターベース

3)Regional Board 合格:Restoration/Perio(実際の患者)Endo/Pros(模型上)

この三つが求められます。

 

IDPを設置している歯科大学院の数・プログラムの定員数が限られているので、まずはプログラムに入るのが大変でした。世界中あらゆる国出身のForeign Trained Dentistたちと競争する状況だし、周りにその道を進んだ人が少なかったので不安も多かったですね。

 

出願するにはNBDEの合格とTOEFLスコアが求められたので、まずその試験準備からはじめました。どちらも参考書が多く出版されていますので、自分の好みに合ったものを選び、あとはひたすら勉強するだけでした。

殆どのプログラムが1次書類審査を通過した候補者を2次実技試験および面接へ呼びます。

実技試験は3時間の間Class 2アマルガム窩洞形成、クラウン形成、ワックスアップなどなどを課されるのが一般的な印象でした。面接は30分〜1時間で面接官2〜5名対候補者1名であらゆることをお話します。(2次試験内容は各プログラムによって全く違うので参考にまででお願いします。)

 

アメリカでの学生生活

高額な学費への不安

合格の嬉しさも束の間、高額な学費に不安になりました。幸いグリンカードを持ってましたので連邦政府から学費融資を受けることができました(年利子5.3%の恐ろしさは今なお響いていますが…)。学生ビザで通うことになると、自力調達になることが多いので、ある意味これがアメリカでの国家資格取得で一番大変なところだと思いました。

 

言葉の壁はどうにかなる、人間はどこにいても変わらない

改めて学生になって過ごした2年間感じたことは、言葉の壁はなくならないけどどうにかなるということと、どの国・地域にいても人間ってさほど変わらないんだなということ。さすが移民で成り立っているアメリカ、特に移民者の多いカリフォルニアだけあって、人種差別などを経験することなく、楽しく2年間の学生生活を終えることができました。

 

アメリカでの歯科医師生活

 

 

シアトルで勤務医を始めて10ヶ月目になりましたが、一般歯科医として修復・歯周・補綴治療・抜歯などを行なっています。日本との歯科保険制度の違いから生じる治療方針の違いは多少ありますが、大きな枠組の中でみると内容はあまり変わりません。

 

アメリカで驚いた一般歯科と専門医との棲み分けと連携

驚いた点としては一般歯科医師と専門医との仕事の棲み分け・連携がとてもうまく成り立っていることす。

例えば前歯・小臼歯の根管治療は一般歯科医が行い、大臼歯の根管治療・全ての場合の再根管治療は根管治療専門医に紹介することが多いです。

インプラントに関しても、埋入は口腔外科または歯周科専門医が行い、一般歯科医はその補綴物修復を行うというシステムを取っていることが多いです。

 

患者さんファーストの結果

もちろん自分でできるケースでしたら治療を行いますが、どのような場合でも何が最も患者さんにとって良い選択であるかを考え、専門医への紹介するのに躊躇しません。専門医とのコミュニケーションもうまく取られているので、途中で患者さんが迷子になったり困惑することも少ないように感じます。

 

アメリカの医療費と歯科受診の実情

国民皆保険制度!アメリカの医療費は訳の分からないくらい高いです。そのため歯科にかかることに敷居が高い人が多いです。大きな虫歯で神経の痛みがあって来院、根管治療・クラウンとなるとあまりにも高額になるためまだ保存できそうな歯でも抜歯を選択、その後は放置となってしまうことが多いです。もっとひどい場合だと歯科にかかることなく市販の消炎鎮痛剤を飲んで我慢するということも結構あると聞きました。国民皆保険制度のおかげある程度のレベルの治療をさほど負担に感じることなく受けられる点は日本の歯科医療の良いところだと感じます。

 

アメリカの歯科医師の業務時間

一般歯科医だと週末を除く週4日勤務、9〜10時間勤務の形が最も多いように感じます(週5日・8時間もよく見かけますが)。

しかしシアトルのような歯科過密地域だと土曜診療のところも多いですね。朝8時~夜6時が一般的な診療時間で、夜間診療や日曜診療はあまり見受けません。

 

日本の医療業界と比べた、アメリカでの育児と仕事の両立

アメリカは産休制度も州によって異なりますが、ビジネスが一定の規模以上だと州と関係なく連邦法律で12週間の産休は義務化されてます。

小規模のところだと日本でのような産休の制度は全くありません。歯科クリニックだと小規模のところが多いので、産休に関してはオーナーの裁量に任されてます。

国もしくは州により定めらている育休に関してはあまり聞かされませんが、一般企業に通う友達を見てると各企業で独自の育休制度を運営してるようでした。乳幼児保育においても国・州の補助などは皆無で、デイケア(保育園)の費用もかなり負担になる金額です。人々の認識自体は育児に対して穏便に見てくれると感じますが、制度・経済的な面からは全くダメだなと感じます。

 

グローバルなキャリアの選択肢がある彼女の今後の構想

ー国家資格が3ヶ国ある分、その分キャリアの選択肢があると思いますが、今後はどのような予定ですか?

 

生涯一般歯科医としてのキャリアを貫くだろうと思います。今のところは開業などは考えておらず、一般歯科医としての知識・スキルをさらに磨いて行きたいと考えてます。

またプライベートでは11月に第一子出産を控えており、子供には日本語を喋らせたいという願望から10年内に家族で日本に移りたいと計画中です。中高生になったら恐らくアメリカに戻るかもしれないという条件付きではあります。

今まで生きてきて、計画通り進んだことがほとんでないので、その時の流れに身を任せてをモットーにとにかく毎日を充実に過ごしていきたいです。

 

臨機応変にシチュエーションに合わせた進路選択をしてきた女性歯科医師Maverickarさんは最後に、こんなメッセージをくれた。

 

「他人を見て羨ましく思えることは絶対自分にもできることだと信じてます。大事なのは行動に移すかどうか。

また、人が選ばなかった道を進んで行く選択を恐れないで。選択肢が多いときは単純に考えることがベスト、この選択肢は自分好きなことなのか?Yesならぜひ挑戦してみましょう!」

 

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