【地震】災害と医療。過去の事例から学ぶ被災時の医療機関の対応

【地震】災害と医療。過去の事例から学ぶ被災時の医療機関の対応

2019.12.06 22:14




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日本は災害が多い国で、令和に入ってからも台風・地震など続いています。災害時に被災地域での医療機関や、被災者の診療報酬に関しての取り扱いについて、厚生労働省から事務連絡があることがあります。

 

今回は、過去の災害の事例から被災地域の診療報酬の取り扱いがどのようになっているのか今回は、クリニック・歯科医院経営者、薬局経営者・医療従事者向けにご紹介していきます。

 

地震が起きた後、医療機関はどうすれば良いのか?

地震が起きた後、被災地にある医療機関はどのように対応をすれば良いのでしょうか?医院が全壊になったら?半壊になったら?自分で判断して運営するのか?いったいいつ、自治体や厚労省からどの様に知らせが来るのでしょうか?過去の事例から学んでみましょう。

平成 30 年北海道胆振東部地震の場合

今回は、比較的近い時期の平成 30 年北海道胆振東部地震の例をご紹介します。(令和元年12月現在)

平成 30 年北海道胆振東部地震では、「平成 30 年北海道胆振東部地震による被災に伴う 保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて」https://www.mhlw.go.jp/content/000355463.pdf

というお知らせが出ています。

こちらは、地震発生日の8 日後の平成 30 年9月 14 日に公表されており、15ページにわたるPDFとなっています。

 

平成30年北海道胆振東部地震について

平成30年北海道胆振東部地震の概要発生:平成 30 年 9 月 6 日 3:07 頃、

震源:胆振 地方中東部

規模:マグニチュード 6.7(暫定値) ・震源の深さ:37km(暫定値)

 

参考 内閣府の防災情報のページ(http://www.bousai.go.jp/updates/h30jishin_hokkaido/index.html)

 

災害から通知までの日数

いつ災害が起こるかわかりませんが、もし自分の医院が被災した場合にはどのような対応を取ることになるのか、過去の事例から、スケジュール感を確認していってみましょう。

 

平成30年9月6日に地震発生8日後の9月14日に厚生労働省から「平成 30 年北海道胆振東部地震による被災に伴う 保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて」の事務連絡が来ています。

地震発生から事務連絡まで、およそ8日間ほど期間があいています。

 

このことから、医療機関として正式な対応が公表されるまで少なくとも1週間ほどはかかることがわかります。

 

またこの通知の宛先は「①地方厚生(支)局医療課、②都道府県民生主管部(局) 国民健康保険主管課(部)、 ③都道府県後期高齢者医療主管部(局) 後期高齢者医療主管課(部)」となっており、「関係団体へ周知するよう」知らされているため、医療機関まで連絡が届くまではそれ以上の間隔があく可能性があるでしょう。

 

もし被災時でも、インターネットが利用できる場合は、直接厚生労働省のページをチェックし最新の情報を掴めるようにすると良いでしょう。

 

 

北海道胆振東部地震の際の厚労省からの通知の概要

 

地震発生後の通知に記載してある事項は以下の通りです。

 

北海道胆振東部地震の際の厚労省からの事務連絡概要

1.保険医療機関等の建物が全半壊等した場合の取扱い

2.保険調剤の取扱い

3.定数超過入院について

4.施設基準の取扱いについて

5.訪問看護の取扱いについて

6.診療報酬の取扱いについて

 

以下に、上記の各概要をご説明します。

 

1. 地震によってクリニックが全〜半壊した場合は?

万が一、保険医療機関等の建物が全半壊等した場合も、継続性が明らかな場合は、仮設の建物等で、場所的近接性及び診療体制等から保険医療機関等としての継続性が認められる場合は、保険診療又は保険調剤として取り扱って大丈夫だということが記載されています。

2. 被災地の患者が保険証・処方箋を持参していない場合は?

患者が保険証などを、処方箋を持たずにやってきた場合も、処方できること(事後に診療を受け、処方箋を発行してもらう前提)、

処方箋の発行元の確認ができない場合は、患者に確認すること、処方せんの交付を受けた場所が、救護所、避難所救護センターその他保険医療機関以外の場所であることが明らかな場合は、保険調剤として取り扱えないということが記載されています。

 

3. 定数超過入院については当面の間、減額措置は適用されない。

通常は、保険医療機関が、医療法上の許可病床数を超過 して入院させた場合の取扱いに係り、「災害等やむを得ない事情」の場合 は、当該入院した月に限り減額の対象としないとされています。(「厚生労働大臣の定める入院患者数の基準及び医師等の員数の基準並び に入院基本料の算定方法について」(平成 18 年3月 23 日保医発第 0323003 号)の第1の3)

しかし、平成 30 年北海道胆振東部地震での通知では、”この規定にかかわらず、当面の間、同通知第1の2の減額措置は適用 しないものとすること。”とされ、通常は当月のみの減額対象としない期間を、当面の間と記載されています。

 

4. 地震に伴う施設基準の変更届出は行わなくてもよい。

被災者を受け入れたことにより入院患者が一時 的に急増等し入院基本料の施設基準を満たすことができなくなる保険医療機 関及び被災地に職員を派遣したことにより職員が一時的に不足し入院基本料の施設基準を満たすことができなくなる保険医療機関等について下記のように記されています。

 

(1) 当面、月平均夜勤時間数については、 1割以上の一時的な変動があった場合においても、変更の届出を行わなくて もよい

 

→関連規定:「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」以下「基本診療料の施設基準等通知」。平成 30 年3月5日保医発 0305 第2号 第3の1(1)の規定

 

(2)1日当たり勤務する看 護師及び准看護師又は看護補助者(以下「看護要員」という。)の数、看護要員の数と入院患者の比率並びに看護師及び准看護師の数に対する看護師 の比率については、当面、1割以上の一時的な変動があった場合においても、 変更の届出を行わなくてもよい

 

→関連規定:基本診療料の施設基準等通知の第3の1(3)及び(4)の規定

 

(3) DPC対象病院について、「DPC対象病院への参加基準を満たさなくなった場合」としての届出を行わなくてもよい

 

→関連規定:「DPC制度への参加等 の手続きについて」(平成 30 年3月 26 日保医発 0326 第7号)の第1の4(2) ②

 

(4) 上記の届出が不要とされた保険医療機関は、記録と保管が必要。

 

5.訪問看護について

以下のように、要件に該当する場合は、規定の範囲を超えても基本療養費が算定できるとされています。しかし、その旨を訪問看護記録書に記録しておく必要があります。介護保険法に基づく訪問看護も、同様に取扱われるとされています。

 

・要件を満たす場合は訪問看護の指示書の有効期間を超えても基本療養費を算定できる

 

訪問看護指 示書の有効期間は6 か月を限度とするとされています。しかし、平成 30 年北海道胆振東部地震の例では、下記に該当する場合は、基本療養費を算定できるとされています。

 

“① 平成 30 年9月6日以前に主治医の指示書の交付を受けている利用者で あること。

② 保険医療機関等が北海道地震に係る災害救助法の適用市町村に所在す る場合であって、被災のため主治医と連絡がとれず、平成 30 年9月7 日以降指示書の交付を受けることが困難なこと。

③ 訪問看護ステーションの看護師等が利用者の状態からみて訪問看護が 必要と判断し訪問看護を実施したこと。 なお、患者が主治医と連絡が取れる目途がない場合には、速やかに新たな 主治医のもとで適切な治療を続けられるような環境整備を行うよう配慮する こと。”

 

計画書が提出できなくても訪問看護管理療養費の算定が可能

やむを得ず計画書等を主治医に提出することができない場合であっても、管理療養費の算定ができるとされています。

 

居宅でない場合も、訪問看護療養費の算定が可能

健康保険法上、居宅において訪問看護を行った場合に、訪問看護療養費を算定するとされていますが、被災のため避難所や避難先の家庭等で生活している場合においても算定出来ると記載されています。

 

6.診療報酬の取扱いについて

 

ボランティアでの診療は保険診療の取り扱いができない!

 

・ボランティア(日本赤十字社の救護班、DMAT(災害派遣医療チーム)やJMAT(日 本医師会による災害医療チームなど)により避難所や救護所等で行われている診療については保険診療として取り扱えない。

 

→”都道府県知事の要請に基づき、日本赤十字社の救護班やDMAT、JMAT など、ボランティアが避難所等で行った医療に係る経費については、 ① 薬剤、治療材料等の実費 ② 救助のための輸送費や日当・旅費等の実費 などを災害救助法の補助対象としており、これを保険診療として取り扱うことはできない。したがって保険診療としての一部負担金を患者に求めることはできない。”

とされています。

 

・被災地の保険医療機関の医師等が、各避難所等を自発的に巡回し、診療を行った場合、保険診療として取り扱うのか?

→都道府県知事の要請に基づき、災害救助法の適用となる医療については、都道府県に費用を請求する。当該費用の請求方法については、都道府県に確認が必要

 

・避難所や救護所等において診察を受けて発行された処方せんによる調剤も上記と同様。

 

“災害により避難所や救護所等において発行された処方せんについては、当該処方せんに「 災(○で囲む) 」と記されている場合もあるが、災害救助法の適用が明らかな場合は保険診療としては取り扱われないので、処方せんの交付を受けた場所 を患者に確認するなど留意されたい。”とされています。

 

要件を満たす場合は避難所への訪問診療についての訪問診療料は算定可能

 

・通院が困難な患者の避難所への訪問診療料(歯科診療にあ っては、歯科訪問診療料)は算定はできる

→しかし、疾病、傷病から通院による療養が可能と判断される患者に対して訪問診療料(歯科訪問診療料)は算定できない。

 

・被災地以外の都道府県で登録した保険医が、被災地の保険医療機関で診療を行った場合、保険請求可能か。 

被災地以外の都道府県で登録した保険医が被災地の保険医療機関で行った場合には、被災地において、当該保険医が保険診療に従事する被災地の保険医療機関から診療報酬の請求が行われることになる。

 

実は災害時は、被災地以外の医療機関にも関係がある

「平成 30 年北海道胆振東部地震による被災に伴う 保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて」では、被災地以外の医療機関に対しても、被災地の患者受け入れや転院などを受け入れた場合にも算定についての方針などが説明されています

特に近隣の都道府県などに災害が起きた場合に被災地の患者を受け入れる可能性がある場合には、一度厚労省のお知らせなどを確認しておくとよいでしょう。

まとめ

今回の事例から、押さえておくポイントは、災害が起きてからすぐには知らせがこないので、1週間強程度は、被災地の医療機関、医療従事者は、保険診療の算定などについての方針がわからない状態で対応しなくてはならない可能性が高いということ。

災害時は、通常時の保険診療ではなく、災害救助法の適用となり、保険診療の取り扱いとならない場合があるため、患者さんの処方せんの発行元が避難所や救護所だったのかなど確認と記録・保管をしておくことが必要そうです。

被災地ではない地域の医療機関でも注意が必要です。医療機関の方は、ニュースをみて災害地のエリアなどを確認しておき、近隣ではない患者が来院した場合に被災しているか確認をする、厚労省ホームページや自治体のホームページなどで、該当地域の患者が来院した場合の算定などについて確認しておくと良いでしょう。



 

 

 



 

 

 

 

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