【医療の職業図鑑】ソーシャルワーカーとは?
2020.06.10 14:22
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ソーシャルワーカーという職種の名前をご存じの方は多いと思いますが、実際にどのような分野で従事していく職種なのかを具体的にご存じのない方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、ソーシャルワーカーの定義、仕事内容から資格取得の方法まで、何もわからない状態からでもよくわかるようにご紹介します。
この記事を通じてソーシャルワーカーが担うことができる内容を理解して、ソーシャルワーカーを活用した支援、治療を行うことができるようになりましょう。
ソーシャルワーカーとは?
まず「ソーシャルワーク」の定義について紹介します。
日本ソーシャルワーカー連盟の「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」によると、
“ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。“*1と定義されています。
この定義は日本だけでなく世界の各地域でも有効とされている、ソーシャルワークの根底にあるグローバルな定義とされています。
2000年7月に国際ソーシャルワーカー連盟が採択した「ソーシャルワークの定義」では、
“ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人々のエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。“*2
とされています。
つまり、日常生活に問題を抱えた人に対して、社会資源を活用しながら「その人らしく」生活できるように適切な相談、支援を行うこと、社会資源を開発、コーディネートをしていくことがソーシャルワークでは求められることになります。このような役割を担うのが、ソーシャルワーカーです。
ソーシャルワーカーの種類と意味
ソーシャルワーカーは福祉に関わる様々な分野に従事していきます。
①「生活相談員」・「生活支援員」
高齢者の介護や障害者の就労や日中生活の支援をする場合は「生活相談員」・「生活支援員」として支援をしていくことになります。地域生活に関わる様々な社会資源を有効的に活用できるように支援をしていきます。
相談職として従事することが多いですが、介護等の直接支援を行いながら相談活動を行うこともあります。
②行政等での支援機関で従事するソーシャルワーカー
児童相談所や社会福祉協議会等で相談職としてソーシャルワークを展開した支援活動を行います。また、年金や生活保護等の福祉サービス制度の利用に関わる手続きや相談業務を担います。
③医療ソーシャルワーカー
医療ソーシャルワーカーは
“保健医療機関において、社会福祉の立場から患者さんやその家族の方々の抱える経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰の促進を図る業務を行います。”*3
と定義されています。
ソーシャルワーカーを英語で言うと?
ソーシャルワーカーは単純に英語で表記すると「Social Worker」ですが、社会福祉士は「Certified Social Worker」になります。
Certifiedは「公に認められた」という意味ですので、日本では「公に認められたソーシャルワーカー」として「社会福祉士」が名称独占の資格として用いられています。
ソーシャルワーカーの病院での役割
医療機関でのソーシャルワーカーの役割について紹介します。
・通院の調整
医療機関に通院希望がある方の相談を聴き、通院に繋げていく支援を行います。また、初回通院時に必要な情報をアセスメントをして担当医に情報提供をする役割を担うこともあります。
・入退院の調整
入院希望する患者さんの入院手続きに関わる調整や入院治療を担う部署と連携しながら退院日程調整を行います。
・医療、福祉サービスの紹介
患者さんの生活環境に応じて入院時に利用できる入院費用の助成制度の紹介や生活保護や介護保険等の福祉制度の紹介を行います。患者さんとの相談の上、必要に応じた制度申請の支援を行います。
・退院後の生活環境の調整
退院に向けた生活環境の調整を行います。
患者さんと家族の意向を尊重し、必要に応じた福祉サービスの利用に向けた調整や介護施設の通所、入所の調整を行うこともあります。
また、退院後も継続した治療が必要な場合は通院や服薬調整、管理について必要な場合は福祉サービス等の社会資源を活用しながら生活できるように支援していきます。
患者さんとの適宜の面談や他機関や入院治療を担っている部署を交えたカンファレンスが退院に向けた支援では必要になります。
・社会資源との繋がりを作る
社会資源を活用した支援が医療ソーシャルワーカーには求められます。日頃から行政や介護、医療、福祉に関わる様々な機関や人達と繋がりを作り、連携した支援ができるようにすることが求められます。
ソーシャルワークを市民に知ってもらい、市民からソーシャルワーカーを活用してもらえるように地域のイベント等を通じて啓発活動を行っています。毎年7月の「海の日」前後には「ソーシャルワーカーデー」と称して各都道府県で啓発イベントが行なわれています。
ソーシャルワーカーの仕事内容
ソーシャルワーカーは国家資格である「社会福祉士」を有している人が従事をしていることがほとんどです。
病院等の医療関係で看護やリハビリ等の専門職と連携を行いながら、患者さんが治療をしながら社会生活を営むことができるように福祉等のサービスを活用した支援を行っていきます。
病院でのケースワーカーとケアマネージャーの違い
ケアマネージャー(介護支援専門員)は
“介護保険法に位置づけられた職種であり、介護保険の根幹である、「ケアマネジメント」を担う専門職です。”*4と定義されています。
地域における自宅や施設で生活支援を行う際の介護保険に関わる専門職になります。
病院のケースワーカーである医療ソーシャルワーカーは保険医療機関における福祉の専門職です。
医療ソーシャルワーカーとケアマネージャーは同じ「福祉」の領域にはなりますが、支援する環境が「保険医療機関」と「自宅や施設」で異なります。そのため、医療ソーシャルワーカーとケアマネージャーが相互連携して支援を行うことが地域生活の支援では大切になってきます。
ソーシャルワーカーの資格
ソーシャルワーカーを仕事をする際に必要になる資格はありませんが、日本では、資格がないと「ソーシャルワーカー」と名乗って仕事が出来ない場合がほとんどです。
日本の主な求人では、国家資格である「社会福祉士」を取得してソーシャルワーカーとして従事することが求められています。
「社会福祉士」は子供、高齢者、障害者等の様々な人達の生活を支援するために求められる資格です。
さらに、精神保健福祉に関わる支援を行う場合は「精神保健福祉士」、介護に関わる場合は「介護福祉士」を有していると高い専門性を持って従事することを期待されて採用されやすくなります。
ソーシャルワーカーの資格の受験要件
ソーシャルワーカーの国家資格である「社会福祉士」を取得するための受験ルートは12通りあります。
◯福祉系高等教育機関(大学・短大)によるルート
・福祉系大学(4年制)で指定科目履修
・福祉系短大(3年制)で指定科目履修及び相談援助実務経験(1年以上)
・福祉系短大(2年制)で指定科目履修及び相談援助実務経験(2年以上)
〇資格取得のために短期養成施設(6ヶ月以上)を利用するルート
・福祉系大学等(4年制)で基礎科目履修後、短期養成施設を利用
・福祉系短大等(3年制)で基礎科目履修後、相談援助実務経験(1年以上)と短期養成施設を利用
・福祉系短大(2年制)で基礎科目履修後、相談援助実務経験(2年以上)と短期養成施設を利用
・社会福祉主事養成機関(2年以上)と相談援助実務経験(2年以上)及び短期養成施設を利用
・児童福祉士司/身体障害者福祉司/審査指導員/知的障害者福祉司/老人福祉指導主事の実務経験4年と短期養成施設を利用
◯福祉系以外の高等教育機関等から一般養成施設(1年以上)を利用するルート
・一般大学(4年制)卒業後に一般養成施設利用
・一般短大(3年制)卒業後に相談援助実務経験(1年以上)及び一般養成施設利用
・一般短大(2年制)卒業後に相談援助実務経験(2年以上)及び一般養成施設利用
・相談援助実務経験(4年以上)及び一般養成施設利用
ソーシャルワーカーの資格が取れる学校
「社会福祉士」を取得できる福祉系の大学は全国各地にあります。また、日本福祉大学、日本社会事業大学、NHK学園等の通信制の教育機関があります。定期的なスクーリングはありますが、働きながら通信制で学ぶことも可能です。
放送大学では「社会福祉主事」という任用資格を取得できますが、放送大学だけでは「社会福祉士」の資格は取得できません。
ソーシャルワーカーの資格取得方法
前述した12通りのルートのいずれかに該当することで社会福祉士の受験資格を有することになります。毎年1月末に行われる社会福祉士国家試験に合格後、登録手続きを行うことで「社会福祉士」を名乗ってソーシャルワークに従事することができます。
ソーシャルワーカーの資格の難易度
社会福祉士の国家試験では以下の18科目全てで得点があり、総得点の60%以上が合格基準になります。合格率は2014年〜2020年は約25%〜29%で推移しています。*6
[1] 人体の構造と機能及び疾病
[2] 心理学理論と心理的支援
[3] 社会理論と社会システム
[4] 現代社会と福祉
[5] 地域福祉の理論と方法
[6] 福祉行財政と福祉計画
[7] 社会保障
[8] 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
[9] 低所得者に対する支援と生活保護制度
[10] 保健医療サービス
[11] 権利擁護と成年後見制度
[12] 社会調査の基礎
[13] 相談援助の基盤と専門職
[14] 相談援助の理論と方法
[15] 福祉サービスの組織と経営
[16] 高齢者に対する支援と介護保険制度
[17] 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
[18] 就労支援サービス、更生保護制度
*7より引用
ソーシャルワーカーが活躍できる職場・求人される施設
公務員
福祉事務所や行政で福祉に関わる業務に携わることができます。子供、高齢者、障害者だけでなく福祉行政は多種多様の業務があるので、様々な分野で発揮できる広い視野と専門性が求められます。
病院
医療ソーシャルワーカーとして医療機関と地域生活の橋渡しの立場で活躍することが求められます。精神科医療では「精神保健福祉士」の資格を有していることが求人の条件になることが多いです。
介護
地域包括支援センターや介護福祉、介護保険制度に関わる事業所で活躍していきます。従事しながら「介護福祉士」や「ケアマネージャー」の資格取得をすることで専門性を高めることができます。
リハビリ
医療機関でのリハビリテーションチームの一役として、地域生活においてリハビリテーションに特化した事業所でリハビリテーションに関わる専門職と協働してサービス利用に関わる相談や調整役を担っていきます。
ソーシャルワーカーの年収・給料
給料についてですが、基本給が全国各地で差があります。都市と地方では差が大きくあり、基本給が20万円を超える地域があれば15万円程の地域があるのが一般的です。基本給に交通費等の手当てが加算されていきます。
また、「社会福祉士」等の国家資格を取得していると、基本給に加えて資格手当が加算される職場がほとんどです。ただし、資格給の金額には職場で大きな差があり、一般的には、3,000円の職場があれば30,000円の職場があるのも現状です。資格給と基本給で給料が低くならないようにバランスを取っている職場もありますので、資格給が高いから良いとは一概には言えません。
基本給に加えて資格手当や交通費等の手当が加算されますが、税金等の天引きもされますので給料は他業種と比べても高いとは言えません。
一般的には、①公務員 > ②医療関係 > ③地域福祉に関わる事業所 の順番でソーシャルワーカーの給料は高くなっています。
ソーシャルワーカーのやりがい
ソーシャルワーカーは関わる相談者が「その人らしく」生活をするための支援を行なうことで、「人の役に立っている」と実感できることがやりがいと感じることができます。
また、社会資源で足りない資源を新しく作る支援者として担うことも少なくないため、「地域社会を創る専門職」としてソーシャルワーカーとしての専門性を実感することが できる職種でもあります。
一筋縄ではいかないケースも少なくないですが、医療職や福祉職をはじめとした様々な職種の人達と連携しながら支援を行なっていくのでソーシャルワーカーとしてだけでなく、1人の人間としても視野を広く持てることもソーシャルワーカーの醍醐味の1つです。
ソーシャルワーカーを有効的に活用して効果的な治療と治療に並行した日常生活の充実した支援ができることを期待しています。
[引用]
*1日本ソーシャルワーカー連盟 ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
http://jfsw.org/definition/global_definition/
*2日本ソーシャルワーカー連盟 ソーシャルワーカーの倫理綱領
http://jfsw.org/code-of-ethics/
*3公益社団法人 日本医療社会福祉協会 医療ソーシャルワーカーとは
https://www.jaswhs.or.jp/guide/socialwork.php
*4一般社団法人 日本介護支援専門員協会 介護支援専門員とは
https://www.jcma.or.jp/?p=21659
*7公益社団法人 社会福祉振興・試験センター 出題基準・合格基準 より
http://www.sssc.or.jp/shakai/kijun/kijun_02.html
[参考]
*5公益社団法人 社会福祉振興・試験センター 受験資格(資格取得ルート図)より
http://www.sssc.or.jp/shakai/shikaku/route.html
*6厚生労働省 第32回社会福祉士国家試験合格発表
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10128.html
ライター とまと 11年目のソーシャルワーカー
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